研究課題/領域番号 |
18K06259
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
砂長 毅 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 准教授 (20448393)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / 卵母細胞 / sox |
研究実績の概要 |
本研究では,ミダレキクイタボヤの有性化のタイミングで発現量が上昇する遺伝子群を中心として,その発現パターンと機能を調べることにより,生殖細胞の供給源としてはたらく生殖系列幹細胞の分化調節機構およびその幹細胞ニッチの所在,ニッチから幹細胞への分化調節シグナルの実態について明らかにする。 2019年度は,生殖系列の発生に関与する遺伝子を含むSox遺伝子ファミリーの発現解析と機能解析を実施した。トランスクリプトームデータからSoxB1,SoxB2,SoxC,SoxD,SoxE,SoxFの各サブファミリーに属する配列をスクリーニングした。定量RT-PCR法により有性生殖期と無性生殖期の各mRNAの発現量を比較した。その結果,無性生殖期と比べ有性生殖期にSoxBが1.16倍,SoxB2が1.39倍,SoxCが2.84倍,SoxDが3.44倍,SoxFは1.64倍多く発現していることが分かった。次にin situ 解析によりSoxB1が鰓かごの表皮で特異的に発現していること,SoxB2とSoxFが卵母細胞で特異的に発現していることが分かった。機能解析として,siRNAを用いてSoxB1,SoxB2,SoxFのノックダウンを行った。その結果,SoxB1のノックダウンでは,目立った表現型は観察されなかった。一方,SoxB2,SoxFをノックダウンした群体では,卵母細胞のサイズ分布が小型に偏り,成熟段階に近づく大型の卵母細胞数に減少傾向がみられた。このことは,両遺伝子が卵母細胞の分化に必要である可能性が示しており,引き続き,詳細な機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物であるホヤは海上で飼育している。2018年度に豪雨被害で実験動物の予定外の死滅が生じ,計画に遅れが生じた。2019年度はその遅れを完全な取り戻すことが出来なかった。年度末には,新型コロナウイルス感染症拡大への対策等により,研究活動に制限を受けたことにも影響を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も研究進行の遅れを取り返すべく実験を進めている。ただし,当初65クローンのcDNAに対し網羅的に発現解析や機能解析を実施する予定であった。現在,その半数以上について完了しているが,研究の最終年度においては,研究に一定の区切りをつける必要がある。残りのクローンについては,2018年度に作成したトランスクリプトームデータを用いた遺伝子アノテーションを行い,それを元に発現,機能解析に進むクローンに優先順位をつけて実施することを検討する。当初の研究目的および研究計画の大幅な変更はせず,解析対象の遺伝子の進捗に応じて成果のまとめ方を考えながら進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子の機能阻害に必要な試薬(1つの遺伝子につき5万円から6万円の費用)の購入が計画を下回ったことが,2019年度に残額が生じた主たる要因である。2020年度のおいて,2か年分の進捗遅れを取り戻すことを意識し,実験を遂行する。よって,2020年の研究費と合算して,当初の研究目的のために使用する。
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