研究課題/領域番号 |
18K06260
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今村 寿子 九州大学, 医学研究院, 助教 (30523790)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数理モデル / 分岐形成 / 肺 / 血管 |
研究実績の概要 |
肺気管支でみられる分岐構造の階層性について、分岐枝長が上皮のlaplacian成長に依存することと、分岐枝径が細胞形状に依存することを、数理モデルを用いて示してきた。本年度は、細胞形状依存的な分岐形成について数理解析を行い、頂端収縮と組織成長によって、組織形態の力学的不安定化が引き起こされることを理論的に説明した。また、分岐枝長と分岐枝径の双方の制御を組み込んだ数理モデルを構築し、近位側の太く長い管腔と、遠位側の細く短い管腔の、それぞれの形成を再現する条件を明らかにした。以上の研究成果について、日本分子生物学会のワークショップで講演した。 分岐現象とその階層性をテーマとした本研究の新しい展開として、血管形成を対象に新しい数理モデル系を開発した。血管内皮細胞による自発的なネットワーク構造の形成を、細胞の細長い形状、細胞間の接着、およびランダムな運動方向制御によって説明することができた。本モデルでは、細胞増殖が分岐頻度を高めることも明らかになった。この研究成果は日本数理生物学会のポスター発表にまとめた。現在は分岐頻度についての数理解析に取り組んでいる。また、大脳では、組織によって異なる血管パターンが見られるが、この制御機構を解析していく共同研究をスタートさせた。血管モデルでは、分岐頻度によってネットワークの密度が変化する。分岐頻度の制御は、肺気管支とはまた別の原理が働くことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺気管支モデルの論文発表が完了できなかった。一方で血管モデルの数値計算が順調に進み、分岐パターンのバリエーションを表現できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
肺気管支と血管形成を通して、様々な分岐原理を取り扱うことができたので、それぞれを比較して統合的な理解につなげたい。血管モデルについては、数理解析と実験観察・生物学的解釈を加えた検討を行う段階に入り、次年度中に論文発表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は感染症拡大により学会がオンライン化され、出張費の支出がなかった。研究環境としても、研究室滞在時間の調整による実験の遅れ、オンライン講義の準備、補講開催といった大学業務の増加があり、進捗が計画よりも少しおくれた。
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