研究実績の概要 |
肺気管支が、長さと太さに関して階層的な構造を形成するメカニズムについて、実験観察と数理モデルを組み合わせた研究を行った。その結果、発生が進むにつれて上皮組織のシグナル分子応答性が変化することを見出し、これが分岐枝の長さを調節するという予測を得た。さらに分岐枝径と分岐枝長の調節機構として、細胞変形の重要性を示した。この成果は学術誌掲載に向けて査読を受けており、受理に先んじてbioRxivにて公開している。
分岐理論研究の中で、本研究の特徴は、2つの異なる分岐原理を組み合わせた点にある。ひとつは上皮の突出部で成長が進むこと、もうひとつは頂端収縮を介した自発曲率変化である。本研究はFGFとWntがこれらの制御を介して分岐スケールを決定していることを示した。定量的実験に基づいた高次分岐のシミュレーションにより、上皮の性質が肺のメソスケール構造をどのように制御しているか新しい視点を提供した。
上述の主要テーマの他に、力学的形態形成の様々な数理モデルを発表した。 分岐研究の発展として、肺とは別の原理が想定される血管形成を取り上げた。血管内皮細胞の運動特性による分岐形成モデル系を構築し、マウス胎仔脳に特徴的な血管パターンの制御ルールを予測した(Takigawa-Imamura et al, 2022, Life)。その他、肺胞嚢形成(連携研究者の麓勝己氏、Fumoto et al., 2019, J Cell Sci)、細胞コロニー成長(Oguma et al., 2020, Phys Rev E )、植物根毛形成(Hirano et al., 2018, Nat Plants)、葉表皮細胞変形(Gunji et al., 2020, Ftont Plant Sci)の数理モデルを発表した。
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