研究課題
基盤研究(C)
ヒト疾患や胚発生などの様々な局面に関わりを持つ中皮細胞EMTの調節メカニズムについては、不明な点が数多く存在する。本研究では、新しい中皮EMTモデルとしてニワトリ胚の漿尿膜融合に着目した。漿尿膜融合では漿膜中皮と尿膜中皮のクロストークにより中皮EMTが誘導される。漿尿膜融合を駆動する中皮EMT制御分子の探索をおこない、EMTコア転写因子、WNTおよびTGFシグナル分子、中皮腫マーカーWT1などが漿尿膜融合の中皮EMT調節制御に関与していることを明らかにした。
発生生物学
上皮間葉転換(EMT)は、ガンの浸潤や転移に深く関与する現象としてよく知られており、ガン制圧の標的として勢力的に研究がなされている。中皮EMTは、中皮腫や卵巣ガン、肺繊維症などのヒト疾患の発生とその進行プロセスに深く関わっている。また胎児の正常発生においても、心臓や腸への血管平滑筋細胞の供給などを通して、重要な役割を担っている。本研究で得られた知見は、中皮細胞性疾患の病態や正常組織発生の中皮EMTの理解促進という観点において、その一端に少なからず寄与できるものと考える