研究課題/領域番号 |
18K06266
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
餅井 真 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (90202358)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 傷表皮 / AEC / アフリカツメガエル / 尾部再生 / トランスクリプトーム / 分泌性シグナル因子 |
研究実績の概要 |
両生類の付属器官(四肢や尾部)の再生過程において、傷表皮が肥厚した組織である頂端部上皮キャップ(AEC)は重要なシグナルセンターとして働くが、その分子的背景は明らかになっていない。本研究では、AECから放出される分泌性シグナル因子(AEC因子)を網羅的に同定し、その発現および機能を明らかにすることを目標としている。我々がすでに作成したes1:egfpトランスジェニックアフリカツメガエルは、幼生尾部再生過程のAECでEGFPを選択的に発現するので、これを利用して単離したAEC細胞を用いたトランスクリプトーム解析をおこない、その結果をもとに以下のように研究を進めた。 1)トランスクリプトーム解析の結果、約30のAEC因子遺伝子候補を同定した。さらに、in situハイブリダイゼーション解析の結果、7種の遺伝子が再生尾部AECで比較的強く発現することがわかった。 2) 再生肢芽における発現解析をおこなったところ、上記遺伝子のうち5個は尾部と肢芽のAECで共通して発現することがわかったが、残り2個は尾部AEC特異的であった。また、AEC因子として過去に報告されているFGF8は、肢芽AECに特異的であった。つまり肢芽と尾部とでAEC因子の構成に違いがあることがわかった。 4) CRISPR/Cas9法を用いて目的遺伝子への変異誘導を試みたところ、変異を持つ胚が数十%程度得られることがわかり、それらを用いたAEC遺伝子の尾部再生における機能の検定をおこなっている。 5) エレクトロポーレーションの条件検討をおこない、レポーター遺伝子を尾部表皮および、AECで発現させることに成功した。さらにこの方法による一部遺伝子の機能解析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のようにおおむね計画通りに研究を進めた。 1) トランスクリプトーム解析の結果、ホールマウントin situハイブリダイゼーション法による発現解析および、尾部AECと肢芽AECとの発現比較について、論文発表をおこなった(Okumura et al., 2019)。 2) CRISPR/Cas9による遺伝子破壊の方法がほぼ確定したので、同定したAEC因子遺伝子のうち数種について遺伝子破壊を試み、そのうちTGFb1遺伝子を破壊した胚では尾部再生に異常が生じることを発見した。 3)エレクトロポーレーションによる表皮への高効率遺伝子導入法がほぼ確立したので、AEC因子のひとつSLIT1をエレクトロポーレーション法で表皮で過剰に発現させたところ、AECへの神経繊維分布が低下することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究を継続し以下のように研究を進める。 1)候補遺伝子のノックアウト固体を、CRISPR/Cas9システムを用いて順次作成する。オタマジャクシ胚以降に発生したものについて、尾部切断後正常に再生するかどうか検討する。 2)TGFb1の尾部再生における機能をさらに明らかにするため、形態学的、遺伝子発現レベルでの解析をおこなう。 3)エレクトロポーレーション法によりSLIT1をAECで過剰発現させた場合の再生における影響をさらに詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに研究を遂行したが、出張(学会発表および共同実験)の回数が見積もりより少なかったこと、および、遺伝子導入および発現解析のための消耗品の購入の一部を翌年に持ち越したため、若干次年度使用額が生じた。次年度では、本来の請求額と合わせて、遺伝子発現および機能解析に必要とされる消耗品等の物品の購入等に当てる予定である。
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