多くの脊椎動物の心臓流出路が心筋から構成されているのに対し、ゼブラフィッシュなどの真骨魚類はエラスチンに富んだ平滑筋からなる心臓流出路(動脈球)を有する。これまでの研究から動脈球の獲得にはトロポエラスチン遺伝子の重複と、エラスチンの新規機能の獲得が重要であることが分かってきた。トロポエラスチンb遺伝子は心臓流出路に特異的に発現し、その機能を阻害すると動脈球に異所的に心筋が分化する。このことから、心臓流出路に存在するエラスチンが心臓前駆細胞の分化運命を心筋から平滑筋へと制御していることが考えられた。ゼブラフィッシュ流出路にはトロポエラスチンbの他に、エラスチン重合に関与するltbpやファイブリン(fibulin)も発現しており、流出路にエラスチン合成を促進させるシステムが進化的に獲得されてきたことが予想された。本研究では、昨年度までに、ゼブラフィッシュの心臓発生において流出路に発現するltbpファミリー、ファイブリンファミリー因子を同定し、その発現パターンを詳細に観察した。その中で、トロポエラスチンbと発現時期や発現領域が被るものについて、機能阻害実験を行い、心臓形成、特に動脈球形成に与える影響について調べた。昨年度は、これら因子の発現制御機構を明らかにするために上流解析を行い、その結果見出された保存性の高い領域をクローニングして転写活性を調べることにより、これら因子の発現制御メカニズムの一端を明らかにすることができた。
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