研究課題
植物は常に周囲の変動を続ける環境からストレスを受け、ストレスに対応するためにエネルギーを消費している。ストレス耐性と成長はトレードオフの関係にあり、限られたエネルギーをどの程度ストレス応答に使い、どの程度成長に使うのか、このバランス制御は重要である。従ってこの分子制御機構の全体を理解することは、植物の生存戦略の本質的なしくみを理解することになる。しかしこの制御機構は複雑でありその分子実態の全体像はまだよくわかっていない。コケ植物ヒメツリガネゴケにおいて、細胞周期エンジンの中核をなすサイクリン依存性キナーゼPpCDKAに着目し、その遺伝子破壊株を作成したところ、予想とは全く異なり通常の環境下では致死とはならずほぼ正常に成長することを見出した。本研究ではこの遺伝子破壊株を用いて研究を進めたところ、遺伝子破壊株では高温などに対するストレス感受性が著しく亢進しており、細胞が極性を失い球状に変化しその後死に至ること、またABAにも高感受性を示すことを見出した。さらに光屈性や葉緑体の光定位運動などの光応答にも異常を示すことを見出した。これらの結果は、PpCDKAが細胞周期以外にも環境ストレスを含む外界からの様々な環境応答反応に重要な機能を持つ因子であることを意味していた。これらの発見に基づき、さらにCDKAによる光応答の制御メカニズムを研究し、CDKAは細胞周期制御とは独立に光応答を制御しており、その制御は細胞骨格の制御を介したものである可能性を見出した。またCDKAが光応答を制御するという機能は被子植物のシロイヌナズナでも保存されていることを見出し、CDKAが持つ細胞周期非依存的な光応答制御機能は広く陸上植物に保存されたものであると考えられた。また動物のCDKAオルソログ、CDK1でも同様に環境応答を制御している可能性を新しく提唱した。
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Plant Molecular Biology
巻: - ページ: -
10.1093/pcp/pcaa165
BSJ-Review
巻: 11 ページ: 60-74
10.24480/bsj-review.11a6.00178
https://www.sci.hokudai.ac.jp/PlantSUGOIne/publication/