研究実績の概要 |
光は光合成に必要であるが、強い光は細胞内での活性酸素種の発生を引き起こすなど有害なストレスとなる。最適な光合成において、二つの光化学系((PSI, PSII)は協調的に機能するが、PSIIは強光ストレスに弱く容易に失活する一方、PSIは強光下でも活性を維持することが知られている。これまでの報告及び自分の解析から、チラコイド膜タンパク質PGRL1が、強光下でのPSI活性維持に重要であることが示唆されていた。PGRL1がPSIの光防御に果たす機能を明らかにするために、PGRL1タンパク質に種間で保存される6つのシステイン残基に着目し、クラミドモナスを用いてシステイン残基の置換変異体を作製し解析を行った。6つあるシステイン残基のうち、N末端側に位置する2つのシステインをセリン残基へ置換したところ、PSIの光感受性には影響しなかった が、レドックス依存的な複合体の形成が見られなかった。一方、C末端に位置するシステインをセリン残基へ置換したところ、PSIの光感受性が欠損株レベル並に高まった。また、PGRL1タンパク質の蓄積も減少したことから、C末端部分に存在するシステイン残基は、PGRL1の構造並びに機能に重要であることが明らかになった。これらの結果について、第64回日本植物生理学会年会で発表した。 期間全体の主な成果は上述した通りであり、現在論文投稿準備中である。当該研究期間中には、日本植物生理学会年会(第61, 62, 64回)で研究発表を行った。さらに、2021年度日本光合成学会年会シンポジウム、及び Finnish-Japanese Binational meeting 2021にて招待講演を行なった。また、研究成果を含む総説を発表した(光合成研究 第31巻, (2021) 162-168)。
|