研究課題/領域番号 |
18K06278
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 真幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80546292)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リボソーム / ホウ素 / uORF / AUGUAA / mRNA分解 |
研究実績の概要 |
本研究では、開始コドン-終始コドンという、アミノ酸をコードしない配列AUG-UAA配列を介してどのようにホウ素依存的にリボソームが停滞するのかを解明し、これまでにない新奇のリボソーム停滞制御機構を明らかにすること及び、これらの発現制御に関わる因子の同定を目的とした。 ホウ素存在下、非存在下の条件で、小麦胚芽抽出液によるin vitro 翻訳後、AUGUAA上で停滞しているリボソームmRNA複合体を精製し、Cryo-EMによるリボソームの構造解析行った。 その結果、3 Aの分解能を持つリボソームの構造を得ることに成功した。このリボソームの構造を解析した結果、ホウ素存在下、非存在下において、リボソーム自体の大きな構造の変化は認められなかったものの、リボソームに結合する因子において違いが認められた。特にリボソームのAサイトに結合している翻訳終結因子eRF1の構造が、ホウ素によって変化することが明らかとなり、この差が、ホウ素を介したAUGUAA上でのリボソームの停滞に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。 次に、AUG-UAA配列を介したホウ素依存的なリボソーム停滞に伴うmRNA分解を制御する因子の同定のため、これまで、5’UTRを含むNIP5;1 にGFPを付加させた形質転換植物を用い、変異原処理した植物のGFP蛍光を指標とした、NIP5;1のホウ素依存的な発現制御に関わる遺伝子の選抜を行ってきた。これまで、2つの候補遺伝子を同定し解析をすすめている。これらの遺伝子は、NIP5;1のmRNA分解、翻訳制御にそれぞれ関わる遺伝子である可能性が高いことが明らかとなっている。また、さらなるスクリーニングにより、新しい候補遺伝子が発見され、現在、親株と掛け合わせたF3植物を用いて次世代シーケンシングを行う準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cryo-EMによるリボソームの構造解析において、当初の予定よりも高い分解能を持つリボソームの構造を得ることができ、ホウ素存在下、非存在下でのリボソームの結合因子の違いを明らかにすることができた。その結果、2年目以降では、リボソームの構造解析では得られない新たな情報を生化学の実験から示すことができた。 一方で、ホウ素は翻訳終結因子eRF1の安定性に関わることは、構造解析から明らかとなったが、3Aの高い分解能のリボソームの構造でも、ホウ素の実際の結合場所を知ることはできなかった。そのため、3年目で光活性化ボロン酸(photoaffinity boronic acid:PABA)を用いた実験を進めていく必要がある。 リボソーム停滞及びmRNA分解に関わるターゲット因子の同定に関して、これまで、原因遺伝子ならびに、その機能解析は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ホウ素が関与している作用点の特定のため、光活性化ボロン酸(photoaffinity boronic acid:PABA)を用いてAUG-UAAで停滞しているリボソームのホウ素の結合部位を推定する。 光活性化ボロン酸については、生化学を用いて再考する必要があり、実際に構造精製が可能かどうかを再度検証し、可能であれば、PABA存在下でリボソームの精製を行い、標的タンパク質の特定を行う。 リボソーム停滞及びmRNA分解に関わるターゲット因子の機能解析と変異株の原因遺伝子の特定を引き続き行う。
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