研究課題
根粒菌は窒素固定の見返りに大量の光合成産物を宿主のマメ科植物から受け取るが、窒素固定遺伝子を破壊しても宿主に感染して根粒を形成する。このような根粒菌は誠実に共生する根粒菌と比較して有利であり、自然界にも常に誕生していると推測される。しかし窒素固定しない根粒菌は人工的に作製するのは容易であるにも関わらず、自然界で単離された例は我々の知る限り存在しない。私達の単離したpink4変異体の研究から、宿主植物は窒素固定しないことが判明した共生している根粒菌に対して、過敏感細胞死に似た仕組みを用いて徹底的に滅ぼすことを発見している。この仕組みが破綻しているpink4変異体を用いて、東北大の圃場の土を用いてスクリーニングを行ったところ、実際に複数の窒素固定しない根粒菌株を単離した。ゲノム解析の結果から、実際に変異部位も同定している。我々の結果は、自然界では常に窒素固定しない根粒菌が生まれているが、宿主植物はPINK4システムにより、このような根粒菌が繁栄しないように制御していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度、我々は圃場から窒素固定活性を持たないがミヤコグサに共生できる根粒菌を単離することで、実際に自然界で根粒菌のcheatingという問題が生じることを実証した。また、この根粒菌はpink4変異体に対する表現型においても、人工作製した窒素固定しない根粒菌と類似しており、PINK4システムは少なくともミヤコグサでは普遍的に重要であることが期待される。
圃場からの根粒菌の単離とゲノム解読を続けて、東北大の鹿島台圃場におけるcheating根粒菌を網羅的に同定する。またメタゲノム解析と合わせて、宿主植物がどのように土壌根粒菌叢を制御しているかを解析する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
J Plant Res.
巻: 133 ページ: 109-122
https://doi.org/10.1007/s10265-019-01159-x
Plants (Basel)
巻: 8 ページ: E142
10.3390/plants8060142