研究課題/領域番号 |
18K06283
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
田村 謙太郎 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40378609)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | シロイヌナズナ / 核膜 / 核膜孔 / 核ラミナ / 遺伝子発現制御 / 花粉 |
研究実績の概要 |
核膜は外膜・内膜・核膜孔・核ラミナから構成されている多機能バリアーである.細胞質と核内を結ぶ唯一の通り道である核膜孔は複数のヌクレオポリンタンパクからなる巨大な複合体である.核膜孔は物質の輸送制御だけでなく核内因子と相互作用することで機能発現することが明らかにされつつある.本研究では高等植物の核膜および核膜孔による生理機能および遺伝子制御機構の解明に焦点を絞った. 高等植物の核膜ラミナ様構造はKAKU4とCRWNによって担われている.両タンパク質を欠く変異体では細胞核の形状が異常になる.我々はKAKU4が花粉粒の栄養核膜に高蓄積していることを見いだした (Goto et al. 2020).花粉粒の栄養核の核膜は不定形をしているがその生理学的意義は不明だった.細胞生物学的解析により,KAKU4-CRWNタンパク質複合体が栄養核の核膜形態を維持し,花粉管伸長時の栄養核のポジショニングに関与することで,効率的な受精を担っていることを見いだした (Goto et al. 2020).一方,栄養器官においてCRWNは特定の遺伝子群と相互作用することで発現制御を行っていることを見いだした (Sakamoto et al. 2020). CRWNsは銅関連遺伝子群に相互作用することで環境からの銅への耐性に寄与していることがわかった.以上より,植物の核膜がもつ新しい生理機能と遺伝子発現制御機構を明らかにすることができた.これらの研究成果の一部を植物における核膜孔の遺伝子初制御に関する総説論文としてまとめた(Tamura 2020).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物の重要な核膜構成成分であるKAKU4-CRWN複合体の新しい生理機能を明らかにすることにできた.
|
今後の研究の推進方策 |
核膜孔複合体の構成要素であるNup136と相互作用する遺伝子群の解析に焦点を絞り研究を進める.nup136変異体と野生型の比較トランスクリプトームのデータを参考にして,候補遺伝子群とNup136との相互作用を確認する.これと平行して,試験管内における核膜の試験管内再構成系の確立を行う.核膜および核膜孔の形成や核内因子(特異的な遺伝子領域)との相互作用を明らかにするうえで必要な実験系と考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該研究を進めるために立ち上げた試験管内による植物の核膜再構成系の確立に当初の予定より時間がかかったため. (使用計画)引き続き,高等植物の核膜孔複合体による新しい遺伝子発現調節機構の解析の推進のために使用する.
|