研究実績の概要 |
高等植物は独自の核膜構造と機能を獲得してきたことが知られている.核膜は遺伝情報の格納のためのバリアーとしてだけでなく,様々な細胞内イベントを支配する分子反応の場としても機能する.核膜孔複合体は進化的に保存されたチャネルで,核と細胞質間の輸送をコントロールしている.核膜孔複合体は約30種類のヌクレオポリンとよばれるタンパク質群によって形成されている.これらヌクレオポリンの一部は共通構造があるものの,多くは多様な独自の構造を持つタンパク質である.最近になって,個々のヌクレオポリンが特異的機能を持つことが明らかになってきた.本研究では,申請者は核膜孔複合体の新しい機能として,核内クロマチンとの相互作用および,生体防御に関与する遺伝子発現との関連についての解析を行った.今年度は,核膜孔複合体による遺伝子発現制御系のより詳細な機能を知るためのツールとして,試験管内における植物細胞核膜の再構成系を確立することとした.最初に密度勾配遠心法を用いてタバコ培養細胞から細胞核を精製する方法を確立した.単離核を界面活性剤を用いて脱膜することで,クロマチン画分を調整した.このクロマチンとGFP標識したマイクロソーム画分を一定条件間でインキュベートすることにより,核膜の再構成がおきることを確認した(Tamura et a., 2021).共焦点レーザー顕微鏡で3Dタイムラプス撮影することで,核膜の形成過程の立体形状を明らかにすることができた.再構成された核膜には核膜孔が形成されていることから,今後,一核レベルでの核膜孔―クロマチン相互作用解析に使えることが期待される.
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