研究課題/領域番号 |
18K06289
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
國枝 正 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (90566077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セルロース合成酵素 / 細胞壁 / 細胞内局在制御 |
研究実績の概要 |
植物細胞壁の主要な構成成分であるセルロース微繊維は、セルロース合成酵素によって細胞膜上で合成される。細胞の成長中および成長後にそれぞれ形成される一次細胞壁と二次細胞壁には、独立したタイプのセルロース合成酵素が関与する。植物細胞は成長に合わせてこれらセルロース合成酵素のタイプを使い分けているが、セルロース合成酵素の細胞膜への局在制御が細胞の分化状態によってどのように制御されるかは不明な点が多い。本研究では、セルロース合成酵素の局在制御を担う因子を同定し、その機能解析を通して細胞壁形成の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 昨年度の解析で同定したセルロース合成酵素の局在制御を担う候補因子について、本年度は作出したシロイヌナズナ形質転換体などを用いながら当該因子の機能解析を行った。セルロース合成酵素上には候補因子が結合し得る配列モチーフが数カ所存在する。酵母ツーハイブリット法によって示唆された候補因子との物理的結合性の高い2カ所のモチーフについて、変異の有無による蛍光タンパク質と融合させたセルロース合成酵素の細胞内動態を観察した。変異を加えていない野生型タイプにおいてはっきりと観察できたゴルジ装置と考えられる細胞内の顆粒状構造が、モチーフ変異型タイプではほとんど観察できなかった。このことは、セルロース合成酵素のゴルジ装置での集積に候補因子との結合が必要であることを示唆している。一方、細胞の輪郭に沿った蛍光シグナルが野生型タイプで観察できているものの、その様子は典型的な細胞膜局在タンパク質のものとはやや異なるように見えた。そのため、動態観察に用いた蛍光タンパク質融合セルロース合成酵素と細胞膜タンパク質との共局在解析、および当該タンパク質によるセルロース合成酵素変異体の相補性試験などの準備を進めており、当初の計画に加えてそれらの解析についても次年度に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルロース合成酵素の局在制御メカニズムを明らかにすることを目的とする本研究において、これまでに実施した解析によって着目した候補因子が実際にセルロース合成酵素の局在制御において機能することを支持する結果を得られており、また、今後の解析に使用する植物試料の作出についてもほぼ計画通りに進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
作出した形質転換体を用いてこれまで成長中の細胞で行ってきたセルロース合成酵素の動態観察を、細胞分化によって一次細胞壁から二次細胞壁へと形成する細胞壁のタイプが変化する過程を経時的に追いながら詳細に行う。また、酵母ツーハイブリット法で検証した候補因子とセルロース合成酵素との物理的相互作用について、共免疫沈降実験などの他の実験手法によっても検証する。さらに、候補因子変異体の細胞壁の表現型解析として、形状解析や構成成分分析を当初の計画に従って推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
形質転換体の作出において時間を要したものがあり、それらの形質転換体を用いた実験に使用する物品をR2年度に購入することにしたため、次年度使用額が生じることとなった。また、参加予定だった学術集会が中止となったため、その参加費用も次年度使用額となった。研究計画には当初のものから大きな変更はないため、これら次年度使用額を合わせて、実験に必要な物品の購入、および成果発表のために使用する。
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