研究課題/領域番号 |
18K06292
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島崎 研一郎 九州大学, 理学研究院, 名誉教授 (00124347)
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研究分担者 |
後藤 栄治 九州大学, 農学研究院, 助教 (90614256)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 気孔 / 孔辺細胞葉緑体 / アブシジン酸 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、植物表皮の気孔孔辺細胞に存在する葉緑体の役割を解明することである。以前の研究により、孔辺細胞葉緑体は生成されたATPや還元力を細胞質に運び出し、プロトンポンプに化学エネルギーを供給することがその主な役割であることが示されている。本研究は、その働きに加えて、ABAによる気孔閉鎖に孔辺細胞葉緑体が寄与するとするもので、昨年度の研究によりその一端が示された。しかし、このABAの作用機構は全く不明である。本年度はその手がかりを掴むため以下の実験を行なった。 まず、ABAの作用として葉緑体光合成電子伝達による活性酸素発生の増加と気孔閉鎖を確認した。この時の、活性酸素の発生増大は電子伝達の増加によるものでないかと考え、電子の流れが悪くなった変異株、kea3-1とkea3-2変異体を使用した。この変異株はチラコイド膜を横切って形成されるH+勾配を解消し、電子の流れを促進するK+/H+ exchange antiporter (KEA) が変異を起こしており電子伝達が滞っている。 予想通り、この変異株の表皮にABAを添加しても気孔は閉じなかった。しかし、気孔を閉鎖させるH2O2、あるいは、Ca2+を加えると気孔は閉じた。したがって、kea3-1とkea3-2変異がABAの作用を阻害するものの、気孔閉鎖機構は正常に機能していることを示している。以上の結果は、電子伝達が気孔閉鎖を促すことを示している。もしそうなら、電子伝達を促進すれば気孔は閉鎖するはずである。そこで、K+/H+ 交換輸送を促進するionophoreであるナイジェリシンを添加すると気孔閉鎖が起き、そこに電子伝達阻害剤DCMUを加えておくと気孔閉鎖が阻害された。 以上の結果は、電子伝達の促進によって活性酸素の生成が促進され、気孔閉鎖が引き起こされていることを示唆している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の結果を確認するとともに、その、機構の一端を示すことができた。このような研究は他に例がなく、独創性の高い内容であると思う。ただ、どのような機構でABAが葉緑体に作用するのか難問が残っており、その問題を解決したい。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、ABAの作用、特に、電子伝達の促進があるのではないかと考えている。これを調べるには、現在のところ、表皮を用いてクロロフィル蛍光を測定するのが有効であると考えている。ただし、我々のグループではその測定装置を有しないので、その道の専門家と共同研究を考えている。 あるいは、電子伝達の変異株を駆使することにより、同じ問題に迫れる可能性もあると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な備品が安価で入手できた。次年度に高額な試薬を購入する必要が生じたため、来年度に余剰金を繰り越した。
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