研究課題/領域番号 |
18K06293
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
祢宜 淳太郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70529099)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 葉緑体脂質 / 気孔葉緑体 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
孔辺細胞は葉緑体を持っているが、光合成機能に特化した葉肉細胞の葉緑体に比べ、その機能や形成メカニズムに関しては不明な点が多い。葉緑体のチラコイド膜に含まれる脂質は葉緑体形成に必須であり、色素体型と小胞体型の2つの脂質代謝経路を介して合成される。最近、シロイヌナズナの孔辺細胞特異的な葉緑体形成不全変異体gles1を用いた解析により、小胞体経路が気孔葉緑体形成及び気孔開閉応答に重要な役割を担うことが明らかになった(Negi et al., 2018)。しかし小胞体経路を介して合成される葉緑体脂質のうち、どの脂質分子種が気孔葉緑体の形成や機能に寄与しているのかはわかっていない。小胞体経路を主要合成経路とする葉緑体脂質として、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)が知られている。そこでDGDG合成を担う糖転移酵素DGD1の遺伝子を欠損した変異体dgd1を用いて、気孔葉緑体形成や気孔開閉応答への影響を調べた。その結果、dgd1変異体ではgles1変異体と同様、葉肉細胞の葉緑体のクロロフィル蛍光に大きな変化は見られないが、孔辺細胞の葉緑体のクロロフィル蛍光は減少していた。さらに、dgd1変異体は光やCO2に対する気孔開閉応答も阻害されていた。また、孔辺細胞の葉緑体は、葉肉細胞の葉緑体と比較して膜の脂質組成が異なりDGDGの割合が高いことがわかった。以上の結果より、小胞体経路優位な脂質代謝バランスをもつ気孔において、DGDGが気孔葉緑体形成及び気孔開閉応答に中心的な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、孔辺細胞が小胞体を介した脂質代謝経路を発達させた生理学的意義は不明であったが、主に小胞体経路から合成される葉緑体脂質DGDGが気孔の葉緑体形成および気孔の開閉応答に欠かせないことを示した。孔辺細胞における小胞体経路の重要性を示す一例になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
葉緑体脂質DGDGが気孔葉緑体の膜構造を特徴づける役割を持っている可能性を検証するため、野生型およびdgd1変異体のチラコイド膜構造を電子顕微鏡観察により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
SARS-CoV-2の影響で実験計画に遅れが生じたため、研究費の一部を次年度に繰越した。次年度におこなう電顕解析や論文投稿などに使用する計画である
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