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2020 年度 実施状況報告書

精子を作る植物が持つcAMP合成酵素を中心とするcAMP信号系の生理機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06298
研究機関立命館大学

研究代表者

笠原 賢洋  立命館大学, 生命科学部, 教授 (70361748)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード植物cAMP
研究実績の概要

さまざまな生物のシグナル伝達機構において、サイクリックAMP(cAMP)がセカンドメッセンジャーとして機能しているが、植物ではcAMPの生理機能は明確に示されていない。最近、私たちの研究グループは、1つのタンパク質にcAMP合成酵素(AC)とcAMP分解酵素(PDE)の触媒部位を持つ新奇のcAMP合成・分解酵素(CAPE)をゼニゴケから発見した。CAPEはゼニゴケのみならず、精子を用いて有性生殖を行う緑色植物に保存されていること、CAPE遺伝子がゼニゴケ造精器で特異的に発現していることを明らかにした。これらの結果から、CAPEを中心とするcAMPシグナル伝達機構が、精子機能の調節に働いていることが予想される。本研究では、ゼニゴケのcape遺伝子破壊株を用いて精子形成と精子運動能を中心に解析し、cAMPの生理機能を明らかにすることを目的としている。
本年度は、昨年度に引き続きcape遺伝子破壊株の解析を実施することに加え、CAPE遺伝子の緑色植物における分布の網羅的探索とCAPEのACおよびPDE配列の系統解析を行った。ツノゴケと裸子植物イチョウ、ソテツからCAPEのcDNA全長をすでに獲得していたが、さらに近年ゲノム解析が終了した2種の接合藻類のゲノムデータを探索し、精子を形成しないこれら接合藻類ゲノムにはCAPEを検出できないことを確認した。一方で、予期しなかったこととして、近年公開された植物網羅的トランスクリプトームデータベース(OneKP)の検索によって複数の針葉樹類からCAPEの部分配列が検出された。そこで、スギからRNAを抽出してRT-PCRを行うことにより、スギCAPEのcDNAを単離した。針葉樹類の中でもヒノキ目にCAPEが保存されていることが示唆された。さらにACとPDEの系統解析を広く生物分類群を越えて行い、CAPEのACとPDEの系統的位置を解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、精子を形成する緑色植物にCAPEが完全に保存されていることを確実にし、緑色植物の中でも共通の生活様式をもつ植物種でCAPEが保存されていることが明らかにできた。この保存性もCAPEの生理機能を補強するものである。一方で、針葉樹類の一分類群にCAPEが存在することがわかり、植物におけるcAMPシグナル伝達機構の役割の広がりを示唆する成果が得られた。

今後の研究の推進方策

ゼニゴケcape遺伝子破壊株の表現型の解析を継続的に行っており、ゼニゴケ精子運動の定量的評価を引き続き行う。ゼニゴケ精子が持つ二本の鞭毛(前鞭毛と後鞭毛)はそれぞれ異なる動きをするため、それぞれの動きの特徴を捉え、鞭毛運動を評価する測定系を確立する。野生株とcape変異株精子の運動と鞭毛の動きの解析結果を総合してCAPEから合成されるcAMPの作用点を予測し、CAPEを起点とするcAMPシグナル系の役割を解明する。

次年度使用額が生じた理由

前年度から引きつづき、cAMP量測定に必要なゼニゴケ培養系の検討を行っている。cAMP量定量試薬が高額であり、本研究課題を完成させるために重要な実験となるcAMP測定の試薬費等、cape遺伝子破壊株の解析に必要な研究費を持ち越した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 精子による生殖を行う植物はcAMP合成・分解酵素CAPEをもつ2021

    • 著者名/発表者名
      山本千愛、高橋文雄、大江遥介、白畑陽都、柴田あいか、笠原賢洋
    • 学会等名
      第62回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] ゼニゴケ精子の運動性におけるcAMP合成・分解酵素CAPEの機能2020

    • 著者名/発表者名
      山本千愛、高橋文雄、末次憲之、河内孝之、笠原賢洋
    • 学会等名
      日本植物学会第84回大会

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公開日: 2021-12-27  

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