研究課題/領域番号 |
18K06303
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
海老根 一生 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 助教 (90590399)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜交通 / 液胞 / 植物 |
研究実績の概要 |
液胞は植物の細胞のなかでも貯蔵・分解・空間充填・浸透圧調節など多様な機能を担うオルガネラであり、この多様な液胞機能を果たすために多くのタンパク質が液胞へと輸送されている。本研究課題では、植物の液胞輸送経路で機能する分子の使い分けと特異性のメカニズムの解析を通して、植物の液胞輸送経路の多様化の分子メカニズムと意義を明らかにすることである。 植物の液胞輸送経路の特徴として、液胞輸送経路で機能するRAB5が、2つ以上の異なる液胞輸送経路を制御することが挙げられる。これを支える分子メカニズムとして、RAB5がそれぞれの液胞輸送経路で機能する相互作用因子が異なることが想定される。そこで、個々の輸送経路で機能するRAB5相互作用因子を共免疫沈降と質量分析によって単離することを計画した。令和元年度には共免疫沈降実験と質量分析によるRAB5の相互作用因子の網羅的解析を行い、液胞輸送経路へのタンパク質の積み込みに関わると考えられる因子を複数単離した。令和2年度にはこれらの候補因子について、主に細胞内局在について詳細な解析を行った結果、この候補因子がRAB5とエンドソーム上で共局在することを見出した他、予想に反してRAB5が液胞輸送のみならずエンドサイトーシスによる細胞膜からのタンパク質の取り込みの初期過程にも関わることを示唆する結果を得た。さらに、エンドソーム上で機能することが考えられている複数の因子について詳細な局在解析を行った結果、この候補因子が液胞輸送のみならずエンドソームからのリサイクル経路においても機能することを示唆する結果を得た。この他、変異体の詳細な表現型解析から、一部の液胞輸送経路が糖欠乏応答に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度には令和元年度に行ったRAB5の相互作用候補因子について詳細な解析を行い、特にそれらが細胞内で機能する領域についての解析結果から、RAB5およびその相互作用因子がこれまで想定されているタンパク質機能よりも広範な機能を有していることが示唆された。この結果は研究当初には想定していなかった新たな発見につながる可能性があるが、平成30年度の研究の進展に遅れがあったため、全体として研究の進捗に遅れがある。また、解析に必要な顕微鏡の不具合によっても研究の進捗に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
RAB5や令和2年度の解析で得られたRAB5と相互作用する因子について、変異体における液胞輸送やエンドサイトーシスの異常について詳細に解析することで、これらが関与する細胞内輸送経路について明らかにする。特に、これまでの解析では液胞輸送経路のみで機能すると考えれてきたタンパク質については、いずれの液胞輸送経路に関わるかの解析の他、細胞膜上におけるエンドサイトーシスと関連にも注目して解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に計画していたRAB5の相互作用因子の網羅的解析実験が、サンプル調製法の検討によって遅れたため、これを基盤とする研究計画全体に遅れが生じた。さらに、解析に必要な顕微鏡の不具合から、研究の進捗に遅れが生じた。令和3年度には現在の研究計画をさらに進め、主に研究に必要な消耗品に助成金を使用する予定である。また、これらの成果報告についても令和3年度に行う予定である。
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