研究実績の概要 |
昨年度までの実験データから、PSATはCASTORと遺伝学的に非常に近いところで機能していることが示唆された。そこでまず、PSATとCASTORが物理的に相互作用し得るかを検討するために、PSATの詳細な細胞内局在を観察した。比較的輝度の高いTagRFPを融合したPSATを自身のプロモータで発現させ、同時にシロイヌナズナの色素体移行シグナルを付加したGFP(AtRecA-GFP)、または小胞体局在シグナルを付加したGFP(GFP-HDEL)を発現させて、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。AtRecA-GFPは、ミヤコグサ根では想定される色素体での局在が観察されなかった。一方、PSATは小胞体マーカーと共局在することはなかった。シロイヌナズナのPSATをタバコで発現させると小胞体に局在する(Shimada et al., 2019)が、ミヤコグサではPSATは小胞体には局在しない。蛍光タンパク質を融合したPSATは、自家蛍光で可視化した色素体とも居局在しなかった。CASTORは核膜と色素体に局在することが知られており(Imaizumi-Anraku et al., 2005; Charpentier et al., 2008)、PSATとCASTORとの関係は物理的な相互作用ではないことが強く示唆された。 共生復帰変異体であるCR2、その親株であるcastor-6、castor-6とpsat-2の二重変異体に根粒菌を接種し、非接種と接種1週、2週でサンプリングしたRNA-seqのデータを解析した。castor-6と比較して、CR2と二重変異体に共通して発現変動する遺伝子を抽出した。既知の共生因子に加え、アクアポリン、防御応答関連因子、受容体やキナーゼなど、29遺伝子を得た。これら遺伝子の既知の情報では、PSATとCASTORとを繋ぐシグナルを特定するには至らなかった。
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