研究課題/領域番号 |
18K06308
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 誠 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (50714838)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 始原生殖細胞 / 母性Ovo |
研究実績の概要 |
生殖細胞は、生命を時代へと引き継ぐ重要な役割を持つ唯一の細胞である。これまで、ショウジョウバエを用いた研究により、生殖細胞の形成に必要な母性因子として、転写制御因子として機能するOvoタンパク質が同定されている。しかし、母性Ovoタンパク質の機能を阻害した始原生殖細胞は、発生過程で消失してしまうため、生殖細胞分化過程における母性Ovoタンパク質の機能は明らかになっていない。本研究では、ショウジョウバエにおいて、母性Ovoタンパク質が生殖細胞形成に果たす役割を明らかにすることを目的として、母性Ovoタンパク質の下流遺伝子を同定し、その機能を明らかにすることを目指している。 マイクロアレイ解析により、母性Ovoタンパク質が始原生殖細胞中で転写を活性化することが明らかになっている401遺伝子が同定されている。そこで、本年度は、ショウジョウバエ遺伝子発現データベースの情報をもとに、in situハイブリダイゼーション法による発現パターンの解析をおこなった。その結果、5遺伝子が、生殖巣に取り込まれた始原生殖細胞で選択的に発現することが明らかになった。次に、RNAi法により、これらの遺伝子の機能を阻害した。その結果、CG14838遺伝子の機能を阻害した始原生殖細胞は、機能的な精子へと分化できないことが明らかになった。一方、生殖細胞中でCG13741遺伝子の機能を阻害したメス個体が産んだ卵は孵化しないことが明らかになった。そこで、このメス個体が産んだ卵を詳細に解析したところ減数分裂に異常が見られることが明らかになった。以上の結果より、母性Ovo遺伝子が転写を活性化する遺伝子は、精子形成や、卵形成における減数分裂の進行に機能することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエ遺伝子発現データベースの情報をもとに、解析対象とする母性Ovoタンパク質の下流因子を5遺伝子にまで絞り込むことができた。さらに、RNAi法を用いて、これら5遺伝子についてその機能を解析した結果、CG14838は精子形成に、CG13741はメスにおける減数分裂の進行に機能することが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、生殖細胞の発生に機能することを明らかにした母性Ovoタンパク質の下流遺伝子の機能解析を行う。また、母性Ovoタンパク質の下流遺伝子401個のうち、ショウジョウバエ遺伝子発現データベースに発現パターンの情報がないものについて、in situハイブリダイゼーション法による発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析対象遺伝子の絞り込みにおいて、ショウジョウバエ遺伝子発現データベースの情報が利用でたため、支出が大きく抑えることができた。 次年度以降は、解析対象遺伝子を増やすために、このデータベース情報がない遺伝子を対象とした発現解析スクリーニングを行うことに予算を活用することを計画している。
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