研究課題/領域番号 |
18K06311
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
玉置 大介 富山大学, 学術研究部理学系, 特命助教 (20793053)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 紡錘体 / 微小管 / 双極性 / 植物細胞 / 細胞分裂 |
研究実績の概要 |
昨年度作成した微小管・染色体・微小管プラス端結合タンパク質EB1可視化株を用いて, propyzamide処理から洗浄による回復後のMinispindle内の微小管の伸長角度の解析を行った. その結果, 洗浄後1-3分間では染色体(赤道面)に対して70-100°の角度で伸長する微小管プラス端が全体の約40%存在したのに対し, 洗浄後8-10分間では全体の約30%に減少することが明らかになった. またEB1-mCitrine・mCherry-AtTUA6を発現する微小管・EB1可視化株を用いて, Minispindle内におけるEB1のシグナルの発生場所を調べた結果, 80%を超えるEB1シグナルがMinispindleの微小管上から生じていることが明らかになった. このことは安定微小管から新規な動的微小管形成が形成されるという仮説を支持する. また植物細胞における双極紡錘体形成に関与する因子の同定を目的とし,分裂中期の細胞の単離方法の確立と,単離した中期プロトプラストのプロテオーム解析を試みた.まず紡錘体が形成された中期プロトプラストを効率よく作製する方法の検討を行った. その結果, 二段階同調とプロトプラスト化を同時に行うことで中期プロトプラストを効率よく作製することに成功した. このプロトプラストを顕微鏡下で,ピペッターを用いて1つずつ回収し, 100個以上の中期プロトプラストを回収した.このサンプルからタンパク質を抽出し, Nano-LC-MS/MSによるプロテオーム解析を行った. その結果, 中期プロトプラストで発現する500以上のタンパク質を同定することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り, 微小管・染色体・EB1の3重可視化株を用いて, Minispindle内の微小管伸長角度の定量解析を行うことができた. またEB1-mCitrine・mCherry-AtTUA6を発現する株を用いて, Minispindle内の微小管伸長端の局在を解析し, 安定微小管からの新規の動的微小管形成を支持する結果を得ることができた. 安定微小管からの新規の動的微小管形成については, 化学固定した細胞での蛍光免疫染色法によるMinispindle内のγ-チューブリンの局在解析により, 更なる検証を重ねたい.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は, EB1-mCitrine・mCherry-AtTUA6を発現する株を用いて, EB1の軌跡の解析から, Minispindle内での動的微小管の束化を解析する. 微小管と染色体に加えて,γ- チューブリンも同時に蛍光タンパク質標識で可視化した3重可視化株の作出は, 蛍光強度の維持や発現の安定性から困難と考え, 化学固定した細胞での蛍光免疫染色法によるMinispindle内のγ-チューブリンの局在を確認し, 安定微小管が新規の動的微小管の形成の足場となっているか否かを明らかにする. またISS「きぼう」実験棟を利用した宇宙実験のためのフィジビリティテーマに採択されたことを受けて, 重力の大きさの変化(微小重力・過重力)が双極性紡錘体の形成に与える影響についても, 宇宙実験を含めて解析を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初本年度分として交付された部分については概ね予定通り使用することができた. しかし, 前年度からの繰越分(特に設備備 品費)については購入予定の備品の設置場所の確保が本年度も難しく購入を断念したが, 次年度より専用に使用できる実験スペースを確保できたので, 次年度に購入予定である.
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