研究課題/領域番号 |
18K06312
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
関口 俊男 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (40378568)
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研究分担者 |
坂本 竜哉 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10294480)
鈴木 信雄 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (60242476)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カルシトニン / アカエイ / ヌタウナギ / 血中カルシウム濃度調節 / 生理機能の進化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、円口類(ヌタウナギ)と軟骨魚類(アカエイ)を用い、カルシトニンによる血中カルシウム濃度調節機構の進化を解き明かすことにある。 本年度は、前年度に確立したアカエイの血中カルシウム濃度調節機構を解析する為の高カルシウム溶液経口投与実験系を用い、血中カルシトニン濃度を競合ELISA法で測定した。高カルシウム溶液を経口投与すると血中カルシウム濃度が30分で上昇した。しかしながら、血中カルシトニン濃度に変動は認められなかった。一方、アカエイ30個体の血中カルシトニン濃度を測定した結果、生殖腺重量と血中カルシトニン濃度の間に正の相関が認められた。また未成熟なアカエイにエストロゲンを腹腔内投与すると血中カルシトニン濃度が上昇した。上記のことからアカエイにおいては、カルシトニンの生殖機能への関与が示唆された(業績5)。 一方、ヌタウナギでは、ゲノム中に存在する2つのカルシトニン遺伝子の中で、カルシトニン2のクローニングを進めた(カルシトニン1はクローニング済み)。カルシトニン2は少なくとも成体の組織では発現が認められなかった。他の発生ステージでの発現が予想される。さらにヌタウナギにおいても血中カルシウム濃度調節機構を解析する為にアカエイと同様の実験系の構築を試みた。高カルシウム溶液を経口投与することにより血中カルシウム濃度の上昇を検出した。このように血中カルシトニン濃度測定に用いる実験系が構築できた。さらに顎口類で血中カルシウム濃度調節に関わるチャネル遺伝子であるTRPV5の相同遺伝子候補をゲノムから同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の解析から、アカエイカルシトニンの機能を推測できるデータを得た事が1つの理由である。アカエイのカルシトニンは、他の脊椎動物と異なり、摂食による血中カルシウム濃度上昇を抑える血中カルシウム低下ホルモンではなく、生殖機能に関与するホルモンであると考えられた。ヌタウナギについては、血中カルシウム濃度調節を解析する為の実験系が構築できた点がもう1つの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
アカエイでは、カルシトニンと生殖機能との関連についてさらに解析を進める。カルシトニンの産生器官である鰓後腺を培養し、培地へのエストロゲン添加によるカルシトニン誘導の有無を検討する。 ヌタウナギでは、鰓、腎臓、消化管に着目する。これらの器官は、硬骨魚類では、血中カルシウム濃度調節に重要な役割を担っている。今後は、ヌタウナギにおいて、上記の器官が硬骨魚類同様の機能を有するかどうか検討する。まずヌタウナギへの高カルシウム溶液の経口投与実験の系を用い、血中カルシウム濃度調節に関わるTRPV5などのイオンチャネルやその他の輸送体について発現変動を解析する。さらにこれらの器官ではカルシトニン受容体が発現しているので、上記のカルシウム調節関連遺伝子の発現に対するカルシトニンの作用も検討する。
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