研究課題
本研究の目的は、円口類(ヌタウナギ)と軟骨魚類(アカエイ)を用い、カルシトニンによる血中カルシウム濃度調節機構の進化を解き明かすことにある。本年度は、アカエイでは、哺乳類や硬骨魚類においてカルシウムの吸収や排出に関わるカルシウムチャネルであるTRPV5やTRPV6のホモログを同定した。これらの遺伝子の発現は、鰓、腎臓、消化管といった血中カルシウム濃度の調整に関わる器官にも認められた。また血中カルシウム濃度を感知するセンサーとして働くカルシウムセンシング受容体(CaSR)の同族体も同定した。この遺伝子の組織発現分布を解析した結果、CaSRが全身の各臓器に発現していることをつきとめた。このように血中カルシウム濃度を維持するための遺伝子群は、哺乳類、硬骨魚類と軟骨魚類で共通だと考えられる。これまでの研究によると、この遺伝子を調節するホルモンはカルシトニンではなく他のホルモンであると予想される。今後の更なる研究が必要である。ヌタウナギにおいては、前年度構築した高カルシウム溶液の経口投与実験におけるカルシトニンの測定を実施した。高カルシウム溶液の経口投与により1時間で血漿中のカルシウム濃度が上昇、3時間でピークを迎えることが明らかになった。この実験系で、血漿カルシトニン濃度をELISA法で測定した結果、血漿カルシウム濃度と血漿カルシトニン濃度の間に相関関係は認められなかった。さらにヌタウナギのカルシトニンとカルシトニン受容体との応答性を検討した。哺乳類の細胞株にヌタウナギのカルシトニン受容体を発現させ、細胞内のcAMP濃度を測定したところ、ヌタウナギのカルシトニン投与によりcAMP濃度が上昇することを明らかにした。ヌタウナギにおいてもカルシトニンの機能が、血中カルシウム濃度調節以外である可能性が高いが、今後はこの受容体を手掛かりに機能解析をすすめる予定である。
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