本研究は、卵胞形成過程のうち卵母細胞-体細胞相互作用に関係する重要遺伝子の機能について、顆粒膜細胞特異的遺伝子改変マウスおよび器官培養系を用いて調べることにより、卵胞形成メカニズムおよびそのかく乱機構を統合的に解明することを目的としている。令和二年度は、これまでに確立した卵巣の器官培養系を用いて、新生仔期に合成エストロゲンを投与されたマウス卵巣の網羅的遺伝子発現解析により発現量が変化していた成長因子受容体 (FGFR)、およびいくつかの転写因子の阻害剤を添加し、その作用を解析した。FGFR阻害剤を添加しても卵胞形成に対する影響はなかったが、卵胞成長が阻害されていたため、影響を受けている卵胞の発達ステージについて詳細を調べている。一方、転写因子の阻害剤については、合成エストロゲンによる作用を促進または阻害するかどうかを調べるため、合成エストロゲンと組み合わせた添加実験を行い、卵胞形成と卵胞成長への影響を調べた。 また、未成熟マウス卵巣の卵胞培養系を用いて、卵胞構造の維持に関すると考えられる因子の阻害剤を添加し、基底膜の構造を形態学的に調べた。さらに、作製したFoxl2-creGFPマウスの卵巣と子宮におけるcre recombinaseの活性について、C57BL/6N-Gt(ROSA)26Sorマウスを用いて確認したところ、Foxl2が発現している卵巣顆粒膜細胞および子宮間質においてcre recombinase活性を確認することができた。
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