目に入る光情報は視覚として入力されるだけではなく、内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell; ipRGC)を介し、概日リズムの制御にも関わる。概日時計の光受容は、ipRGCが発現する青色光受容体のメラノプシン(別名;Opn4)により行われており、メラノプシンを有するipRGC(melanopsin-expressing RGC;mRGC)は概日時計の中枢である視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus; SCN)に投射し、概日リズムの光同調を担う。よって、メラノプシンの機能障害が起きると外界の光周期に同調できなくなり、睡眠や代謝など様々な生体機能の異常を招くことが考えられる。 本年度には、メラノプシン遺伝子破壊マウスに加えて、概日時計異常モデルとして時計遺伝子欠損マウスを比較対象として追加した。両者のモデルマウスにおいて、体重、摂食量、活動量、摂食・活動リズムの測定、活動リズムによる体温の変化と寒冷刺激による体温の調節能、血糖値測定(GTTとITT)による糖代謝制御能を比較し、メラノプシンが担う非視覚応答能が生体代謝恒常性維持にどのような影響を与えるのかを解析した。 その結果、メラノプシン遺伝子破壊マウスと時計遺伝子欠損マウスは野生型に比べて体重が軽い傾向があるが、CTによる脂肪解析の結果、メラノプシン遺伝子破壊マウスは痩せ型にも関わらず、体脂肪率が高く、特に皮下脂肪が多く分布することが分かった。一方、時計遺伝子欠損マウスは体脂肪率も低かった。 また、GTTとITT測定結果から、メラノプシン破壊マウスと時計遺伝子欠損マウスはインスリン抵抗性が確認され、糖代謝に異常が認められた。 これらの結果から、メラノプシンと時計遺伝子はそれぞれ異なるメカニズムにより、脂肪と糖代謝制御に関わっている可能性が示唆された。
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