2021年度はイメージング技術の開発に関しては新規にYFP-MS2を低レベルに発現する株を得た。その株を観察したところ、YFPシグナルがRNA-FISHによって検出されたdutA RNAの組織特異的な局在を反映することが確かめられ、今後の解析に使えることが判明した。 dutA RNA結合タンパク質の同定に関しては、2020年度までにRNA pull-down法を用いて検出された多数のdutA RNA特異的に濃縮されるタンパク質から、幾つかを選び、それらの機能を調べるための解析を行った。特に濃縮度と特異性の高いと判断されたPabpc1Aとその他の3つのタンパク質について、対応する遺伝子をクローン化した。Pabpc1Aについては、CRIPR/Cas9を含む様々な手法で遺伝子破壊株の作製を試みたが、破壊株は得られず、遺伝子破壊が致死になることが考えられた。また、dutA RNAへの結合特異性を検討するため、RNA pull-down法とRNA免疫沈降 (RIP)による再検証を行う目的でポリクローナル抗体の作製を試みたが、Pabpc1A特異的なタンパク質の検出には至らなかった。現在、FLAG等のタグをPabpc1Aに導入する株の作製を行なっている。 2019年度までに作製した様々なdutA 変異株を用いて、転写因子STATaの活性化の指標としてのチロシン残基のリン酸化と核移行に対する影響を調べた。その結果、ノックアウト株や過剰発現株では影響がなかったが、オーガナイザー特異的プロモーターを利用した強制発現株ではリン酸化レベルと核移行率の両方が有意に低下することを示した。また、2020年度までにChIP-seqによって検出された新規のSTATa標的候補遺伝子に関して、有力候補をリストアップし、ChIP実験とSTATa遺伝子破壊株と救済株を用いたRT-qPCRによる再検証を行なっている。
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