研究課題/領域番号 |
18K06318
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
蓮沼 至 東邦大学, 理学部, 准教授 (40434261)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロラクチン / アンドロゲン / アルギニンバソトシン / アルギニンバソトシン受容体 / 求愛行動 / 下垂体 / 視索前野 |
研究実績の概要 |
有尾両生類アカハライモリの雄は繁殖期に雌に対して特有な求愛行動を示す。この求愛行動の発現は、プロラクチン(PRL)、アンドロゲン、アルギニンバソトシン(AVT)などのホルモンが中枢神経系に作用して制御されていることが明らかにされている。本研究では、PRLとアンドロゲンがイモリ脳内のAVT含有ニューロンおよびAVT受容体発現細胞に対してどのような作用を及ぼすかを明らかにすること、さらに脳内のどの部位に発現する、どの受容体サブタイプを介して求愛行動を制御しているかを検証することを目標としている。 2018年度では精巣および下垂体前葉除去した雄イモリにPRLおよびジヒドロテストステロン(DHT)をそれぞれ単独または同時に投与し、間脳視索前野AVT前駆体遺伝子発現をin situ hybridizationで定量解析した。解析に際して、イモリ間脳視索前野について全ての切片をスライドグラスに貼り付け、AVT前駆体遺伝子を発現する細胞数、および一定以上のAVT前駆体mRNAシグナル強度を示すエリアの面積をImageJによって測定した。精巣および下垂体前葉を除去し、生理食塩水を投与した個体では、偽手術個体と比較し、AVT前駆体遺伝子を発現する細胞数や一定以上のシグナル強度を持つエリアの面積は有意に低下した。一方、DHT単独投与個体で、AVT前駆体遺伝子を発現する細胞数および一定以上のシグナル強度を持つエリアの面積は、生理食塩水投与個体と比較して有意に増加することがわかった。 さらに現状では最も求愛行動発現に関与する可能性が高いと想定されているAVT V1a受容体について、この受容体を特異的に認識する抗体と神経細胞マーカーであるNeuNを特異的に認識する抗体を用いた免疫組織化学的手法により、V1a受容体は、大脳、間脳、中脳、延髄などで少なくとも神経細胞に発現していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イモリ間脳視索前野のAVT前駆体遺伝子発現について、PRLの効果に関しては再検証する必要があるが、少なくともアンドロゲンは発現を増加させる効果があることを明らかにできたこと、さらにAVT V1a受容体が神経細胞に発現していることを突き止めたことは今後の研究の展開に重要である。AVT受容体の生化学的、薬理学的解析については実験系の構築までは準備できている状況で、近く成果を出せる状況にある。以上より進捗状況について冒頭の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
特に5種類のイモリ下垂体後葉ホルモン受容体サブタイプの生化学的、薬理学的解析に重点をおき、哺乳類のバソプレシン受容体に対する各種アゴニスト、アンタゴニストの効果を検証する。その結果をもとに、アゴニストおよびアンタゴニストを雄イモリ脳室に投与することで、それらの求愛行動発現への効果を見る。さらにモルフォリノアンチセンスオリゴを利用し、イモリ脳内の受容体発現をノックダウンし、求愛行動が抑制されるかを検証する。これらより、求愛行動発現に最も重要な受容体分子を特定する。求愛行動発現に重要な受容体分子が特定されれば、求愛行動発現時にその受容体が発現しているどの神経核のどの神経細胞が活性化しているかを細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1/2)のリン酸化や前初期遺伝子の発現により解析を進める。
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