研究実績の概要 |
有尾両生類アカハライモリの雄は繁殖期に雌に対して特有な求愛行動を示す。この求愛行動の発現は、プロラクチン(PRL)、アンドロゲン、アルギニンバソトシン(AVT)などのホルモンが中枢神経系に作用して制御されていることが明らかにされている。本研究では、PRLとアンドロゲンがイモリ脳内のAVT含有ニューロンおよびAVT受容体発現細胞に対してどのような作用を及ぼすかを明らかにすること、さらに脳内のどの部位に発現する、どの受容体サブタイプを介して求愛行動を制御しているかを検証することを目標としている。 2019年度では、主にイモリAVT受容体に対する哺乳類下垂体後葉ホルモン受容体アンタゴニスト/アゴニストの効果を中心に検証した。4種類のAVT受容体サブタイプ(V1a, V1b, V2a, V2b)およびメソトシン(MT)受容体を哺乳類培養細胞に一過的に発現させ、レポータージーンアッセイにより検証した。まず、各受容体について種々の濃度のAVTおよびMTを反応させ、受容体の応答性を確認した。いずれのAVT受容体サブタイプもAVTとMT双方に対して応答性を示したが、AVTの方がより低濃度で応答することを確認した。一方で、MT受容体についてはAVTとMTがほぼ同程度の濃度で応答することが明らかとなった。アンタゴニスト/アゴニストの効果についてはMT受容体も排除せずに解析した。AVP V1a受容体アンタゴニストであるManning compoundやV1b受容体アンタゴニストであるSSR149415は、イモリAVT受容体サブタイプのうち、V1a, V1b, V2b受容体およびMT受容体について、AVTによるシグナル伝達を阻害した。一方、AVT V1a受容体アゴニストである(Phe2, Orn8)-Oxytocinは主としてイモリAVT V1aおよびV1b受容体のシグナル伝達を活性化した。
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