研究実績の概要 |
2020年度では、アカハライモリアルギニンバソトシン(AVT)受容体に対する哺乳類下垂体後葉ホルモン受容体アンタゴニスト/アゴニストの効果について再検証した。4種類のAVT受容体サブタイプ(V1a, V1b, V2a, V2b)およびメソトシン(MT)受容体を哺乳類培養細胞に一過的に発現させ、レポータージーンアッセイにより検証した。4種類のアンタゴニストについて検証したが、そのうちManning compoundやSSR149415はV2aタイプ受容体以外の4種類の受容体のシグナル伝達を強く阻害することがわかり、イモリ脳内のAVT受容体の機能を大きく阻害することには有用であるが、サブタイプごとの機能阻害はできないことをあらためて確認することができた。また、アゴニストについては、(Phe2, Orn8)-Oxytocinは特にV1aタイプ受容体のシグナル伝達を活性化できること、またDesmopressinやWAY267464はV2aタイプ受容体のシグナル伝達を活性化できることを確認した。AVTが制御するイモリ求愛行動に関与するAVT受容体サブタイプを特定する場合、アンタゴニストよりもアゴニストを組み合わせて検証可能であることが明らかになった。本成果は非哺乳類の脊椎動物の下垂体後葉ホルモン受容体に対して哺乳類の下垂体後葉ホルモンのアンタゴニスト/アゴニストの効果について貴重な知見となると思われる。 研究期間全体としては、間脳視索前野におけるAVT前駆体遺伝子発現の促進にはアンドロゲンが重要であることを確認したが、本研究遂行の過程で、成体雄イモリの間脳視索前野で新しくAVT産生ニューロンが作られることも見出した。成体におけるAVT産生ニューロンの新生メカニズムはまだよくわかっておらず、本研究課題を通して新たな研究の方向性も提示することができた。
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