研究課題/領域番号 |
18K06322
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
安部 眞一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (90109637)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精巣形成 / 精細管様構造 / 3次元培養 / 再凝集 / KSR / 間質 |
研究実績の概要 |
哺乳類の精巣は、精細管と間組織から成る。その構造形成機構を調べるため、我々は生後マウス精巣を解離・再凝集させ、コラーゲン内3次元培養系にKSR (KnockOut Serum Replacement)を添加することにより、ほぼ完全な精巣再構築に成功した(Zhang et al., 2014)。さらに、精巣間質に存在するCD34+細胞, p75+細胞, 筋様細胞が、培養7日目には外側から筋様細胞、p75+細胞、CD34+細胞と3層構造を再構築することから、CD34+やp75+内皮細胞が精細管再構築に重要であることを示した(Abe et al., 2017)。そこで我々は、精巣索・精細管の形成における内皮細胞の役割について、新しく作成したtransgenic mouseと、実現したユニークな培養系とを用いて、in vivo とin vitroの両面から解析することを目的とする。 まず再凝集培養におけるCD34+細胞やp75+細胞、ライデイッヒ細胞の動態について調べた。その結果、培養に伴い、CD34+細胞、p75+細胞は集合し、その内部にライデイッヒ細胞が取り込まれていくことが分かった。次に、CD34+細胞やp75+細胞に発現する platelet derived growth factor(PDGF)受容体の阻害剤であるtyrphostin(Tyr)やneurotrophin(NT)-3受容体であるtrkC(ライデイッヒ細胞に発現)の阻害剤であるK252aの影響を調べた。TyrもK252aのどちらも CD34+細胞やp75+細胞の増殖を阻害するが、相乗的効果もみられた。さらに、TyrとK252aは間質様構造形成と精細管様構造形成を阻害することが分かった。これらの結果は、間質様構造と精細管様構造の形成にPDGFシグナリングとNT-3シグナリングが関与していることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
invivoの実験で、胎児~生後マウス生殖巣・精巣におけるCD34陽性細胞の系譜解析を行うため、連携研究者である理研生体モデル開発ユニットの清成寛氏にtamoxifen(TAM)誘導型のCre酵素をCD34promoterの制御下で発現するマウス(CD34 -Cre ERT)を作成して頂き、レポータ―マウス:R26R-H2B-mCherry (loxP)と交配させ、TAMを母親に注射して得られた胎児を調べたが、TAMの量や注射回数等をいくら変えてもCD34+細胞にCherryタンパク質の発現を確認することはできなかったため。一方、「概要」に書いたように、in vitroの実験は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)In vivoの実験 CD34ノックインマウスはCD34のpromoter活性が弱い可能性が考えられたので、CD34+細胞と密接な関係にあるp75+細胞のノックインマウスを理研の清成博士に作成して頂くことになった。Tamoxifenによるcherryタンパク質の発現が確認されれば、妊娠12~14日目にp75+細胞をマークし、運命追跡やlive imagingによる挙動を調べる。 2)In vitroの実験 九大の諸橋先生の研究室で作成された胚型ライデイッヒ細胞特異的にGFPを発現するマウスを供与して頂いたので、再凝集培養におけるライデイッヒ細胞の挙動を蛍光実体顕微鏡やconfocal time-lapse顕微鏡を用いて観察する。また、この系に種々の増殖因子や阻害剤を投与して効果を調べる。 また、P75+細胞にCherryタンパク質を発現するマウスが得られれば、両者の精巣を解離して混ぜ合わせ、再凝集培養を行うことによって、ライデイッヒ細胞とp75+細胞が集まる挙動を調べる。それに種々の増殖因子や阻害剤を加えたときの挙動も解析する。また、精巣の間質を単離して再凝集培養を行い、間質のみで(セルトリ細胞がなくても)ライデイッヒ細胞とp75+細胞が集まるかどうか等について調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は別のトランスジェニックマウスを用いた実験も計画しているため、その費用にあてたい。
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