研究実績の概要 |
我々は、精巣の形成・維持機構を調べるため、マウス精巣解離細胞の再凝集培養で、精細管様構造と間質様構造を再構築することに成功した。間質様構造にはvivoと同様、CD34+細胞の集合体にLeydig cell(LC)が選択的に取り込まれる。本年度は、間質様構造再構築におけるCD34+細胞の役割について調べた。LCには胎児型(FLC)と成獣型(ALC)があるので、FLCのみにGFPを発現するマウスを用いて再凝集培養を行ったところ、ALCはCD34+細胞集合体中に取り込まれるが、FLCは取り込まれないことが分かった。Microarrayの結果からタンパク質の発現を免疫染色で調べたところ、CD34+細胞とALCにはITG a4, a9, b1とVCAM1が発現するが、FLCにはどれもほとんど発現しないことが分かった。そこで、ITG a4, a9, b1とVCAM1の機能阻害抗体を再凝集培養に加えたところ、どれも正常な精巣再構築を阻害した。また、CD34+細胞の凝集やVCAM1との結合が、ITG a4, b1とVCAM1の機能阻害抗体によって有意に阻害されたことから、CD34+細胞の凝集はITG a4b1とVCAM1の結合によることが明らかになった。さらに、ALCとFLCにGFPを発現するマウスを用いてLive imagingによって純化したCD34+細胞とALCの観察を行ったところ、CD34+細胞がALCの集合体に向かってfilopodiaを伸ばして近づき、ALC集合体の中に入っていくことが分かった。これはCD34+細胞のALCに対するchemotaxisと考えられ、VCAM1抗体によって阻害されることから、CD34+細胞集合体の中にALCが存在する間質の構造形成・維持にCD34+細胞とALCの間のITG a4b1-VCAM1相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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