研究課題
ある種のプラナリアは無性生殖と有性生殖を環境に応じて巧みに転換することができる。リュウキュウナミウズムシOH株を用いて、無性個体に別種の有性個体の ミンチを投餌することで有性化させる実験系が確立されている。このことは、有性個体中に有性化を誘導する化学物資(有性化因子)が存在することを示している。また、これまでに有性化因子が複数存在することも明らかになっている。プラナリアは種によって無性状態が異なり、リュウキュウナミウズムシは卵巣原基のみを有するが、近縁種であるナミウズムシは卵巣原基と精巣原基を共に有している。本研究では、様々なプラナリアの有性化機構の共通点と相違点を明らかにすることを目的としている。1年目では、リュウキュウナミウズムシOH株が20°Cで有性化因子を投与することで有性化する一方で、ナミウズムシSSP株は14°Cという低温下において有性化因子を投与することで有性化することを明らかにした。2年目では、組織切片を作成してHE染色により内部組織を観察することで、精巣の発達について調べた。OH株では、卵巣がst.3まで発達した段階で精巣原基が現れ、st.5にかけて発達していくことが知られている。しかしながら、本年度の結果から、SSP株では、無性状態ですでに存在している精巣原基が、有性化初期から卵巣と同様に発達していくことが明らかになった。3年目では、ヨーロッパ産 のSchmidtea mediterraneaの無性系統が有性化するのか検討した。ナミウズムシと時と同様の低温条件を試した所、BCN-10株で有性化が成功した。S.mediterraneaでは染色体の転座のため有性化しないと考えられてきており、大きな発見といえる。4年目では、S.mediterraneaの有性化段階を組織レベルで調べた。その結果、ナミウズムシと同様な有性化過程を経ることがわかった。
すべて 2021
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Zoological science
巻: 38 ページ: 544-557
10.2108/zs210029