研究実績の概要 |
脊椎動物の発生においてWnt/PCPシグナル経路は、間葉系細胞の組織伸長と上皮細胞の平面内極性制御という、2つの異なるイベントを制御することで、様々な組織の形態形成を司る。しかし、Wnt/PCPシグナル経路の下流の分子機構は不明のままである。本研究計画では、マウス初期発生においてWnt5aにより制御される2つの形態形成イベント;前後軸伸長ならびにノードにおける平面内極性の構築を焦点に解析を行う。 昨年度までに、PK,DVL両方に結合するタンパク質のうち2つの因子の遺伝子欠損マウスがノードにおける平面内極性の構築に異常を生じる表現型を示すことを見出していた。 本年は、その結合因子のひとつであるE3ユビキチンライゲースHUWE1により、PK並びにその結合因子の多くがユビキチン化され、Huwe1遺伝子欠損細胞において、PKのタンパク質量が増えることを示した。さらに、マウス胚のノードにおけるHuwe1遺伝子欠損は、Pkの細胞内非対称局在の確立に異常が生じ、その結果ノードの平面内極性の異常、さらには左右軸構築の異常を引き起こすことを確認した。現在はこれまでに得られた結果を論文に執筆中である。さらに現在、もう一つの平面内極性の構築に重要な結合因子の機能解析を進めるとともに、新たに作成した遺伝子欠損マウスにおいても、前後軸伸長に異常を生じる表現型を示すことを見出している。 今後はこれらの因子の解析を通じて、マウス初期発生においてWnt/PCPシグナル経路により制御される形態形成過程のさらなる理解を深める予定である。
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