研究計画最終年度は、これまでのデータに基づいた各解析結果の統合を進めた。特にVenus融合葉緑体分裂遺伝子株を用いたタイムラプスイメージング解析の検証では、葉緑体分裂動態に関する新たな知見を得ることに成功した。またさらに葉緑体分裂遺伝子へ変異を導入し、in vivo解析のほか、リコンビナントタンパク質を用いたin vitro解析を実施した結果、葉緑体分裂リングの分子動作機構におけるGTPase活性の重要性を明らかにすることに成功したため、これらの一連の結果に基づいた論文を報告する準備を進めている(Yoshida and Mogi. in preparation)。この葉緑体分裂リングに関する結果に基づき、ミトコンドリア分裂リングに関しても同様の解析を試みているが、こちらについては現在までに結果が得られていないため、今後解析手法の最適化などを行ったうえで、改めて試みる。一方、生体エネルギー論に基づいた分析を進めた結果、ミトコンドリアと葉緑体の分裂増殖機構を実行する上で細胞が持つエネルギー量の大小がその成功確率に大きく影響していることが明らかとなった。基準を下回るエネルギーしか持たない細胞では、オルガネラ分裂に失敗する様子が再現性良く観察されている。これらの結果は、真核生物の基本的細胞機能を発揮するためには、適正なエネルギー量と、そのエネルギーによって創出される適切なタンパク質コピー数が必須であることがわかった。同結果は、その一部については現在論文投稿準備中であり(Kondo and Yoshida. in preparation)、残りの部分については引き続き解析を行う予定である。
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