研究課題/領域番号 |
18K06326
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
木村 賢一 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80214873)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 昆虫 / キイロショウジョウバエ / 生殖行動 / ホルモン / 性成熟 |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエの雌の産卵行動は、性的に成熟した個体で出現するようになる。この産卵行動は、dsx発現ニューロンにより制御され、ドーパミン作動性ニューロンの活動により調節されている。また、ドーパミン受容体DopRあるいはDopR2を発現するニューロン群がその調節に関与することが明らかになっている。昨年の研究では、この産卵行動の性成熟過程に幼若ホルモンJHが関与するかどうか検証した。DopRあるいはDopR2発現ニューロンにおいてJHレセプターのひとつMet (Methoprene-tolerant)の発現をノックダウンさせ、産卵管伸展および腹部屈曲反応への影響を調査したところ、産卵行動のための回路網はMetレセプターを介してJHにより制御されていることが示唆された。本年度は、もう一つのレセプターGce (germ cell-expressed) について同様に検証した。その結果、DopRあるいはDop2R発現ニューロンにおけるgce のノックダウンは、産卵管伸展および腹部屈曲の誘導率の減少を引き起こし、Metのノックダウンとほぼ同様の影響が見られた。このことは、DopR、 Dop2R発現ニューロンにおいて、それぞれ2つのレセプターは協調して働いていることを示唆している。上記の結果は、未交尾個体における影響を調査したものであるが、今年度はさらに既交尾個体におけるJHレセプターの影響も調査した。その結果、腹部屈曲の誘導率については、Metあるいはgceのノックダウンにより減少し、未交尾の結果と同様であった。しかし、産卵管伸展の誘導率はMetあるいはgceのノックダウンにより増強し、未交尾と逆の反応を示した。この現象は、DopR、Dop2R発現ニューロンのmodifierとして働くドーパミン(pale発現)ニューロン自身へのJHの関与の可能性も考えられ、次年度の課題として残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性成熟に伴う生殖行動の変化に幼若ホルモンJHが関与するかどうか、昨年度明らかにされたJHレセプターのひとつMetの関与に加え、本年度の研究によりもう一つのレセプターGceも関与することが明らかになった。また、未交尾個体における調査に加え、本年度は既交尾個体における調査も進み、その結果、生殖行動の一要素である産卵管伸展反応の出現率が未交尾個体と既交尾個体で逆の影響が示された。この結果は、当初の予想とは異なるものであり、何らかのより複雑なメカニズムの存在が示唆され、新たな課題を浮き彫りにすることができ、次年度の計画を進める上で、大きな材料を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
幼若ホルモンJHの関与を検証するため、引き続き次の実験を行う。本年度までの研究により、pale発現ニューロン自身がJHホルモンにより制御を受けている可能性も検討する必要性がでてきた。この検証のため、pale発現ニューロンにおいてJHレセプター(Met or gce)をノックダウンさせたとき、pale発現ニューロンの強制活性化の羽化後の誘導率の変化に影響を及ぼすかどうか調査する。これらJHレセプターの関与を明らかにするためには、dsx∩DopRあるいはdsx∩Dop2Rニューロン、あるいはpale発現ニューロンにおいてJHレセプターの発現が確かに存在するかどうか検証しなければならない。そのために、JHレセプター(Met or gce)ドライバーGal4を用いてレポーター遺伝子を発現させ、これらニューロンと共発現しているかどうか明らかにする。そのうえで、それらの発現パターンが羽化後の成熟過程において変化しているかどうかを調査する。JHのよるニューロンの変化が、機能的なものか、あるいは形態的な変化を伴うものか明らかにするために、上記ニューロンが羽化後成熟とともに形態的に変化するかどうかもあわせて調査する。もし、形態的な変化が生じていれば、その変化がJHレセプターのノックダウンにより阻害されるかどうか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2019年度の研究費使用計画のうち、旅費について他の経費等で賄うことができたため、108,379円を2020年度に繰り入れることとなった。 (計画)2020年度品目別内訳として、物品に328,379円、旅費160,000円、人件費・謝金720,000円,その他100,000円、計1,308,379円を予定している。
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