研究課題/領域番号 |
18K06331
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北村 敬一郎 金沢大学, 保健学系, 教授 (80283117)
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研究分担者 |
小林 功 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (30774757)
古澤 之裕 富山県立大学, 工学部, 講師 (80632306)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 比較生理学 / ゼブラフィッシュ / ウロコ / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
骨組織を修復するには、骨吸収(成熟破骨細胞が骨の障害部位を骨吸収)と骨形成(骨芽細胞による吸収部位への新しい骨置換)の2つの過程が必要である。しかし、その両方の過程を体表面から観察できる優れたモデル系がなかったため、骨吸収から骨形成へと移行する機構は不明な点が多く、骨代謝を研究する上で問題になっていた。そこで本研究では、骨芽細胞と破骨細胞が共存する魚のウロコに注目した。ウロコは魚の体表面にあり1枚ずつ抜去して観察できる。そのウロコに切り込みを入れると、その切断部位の骨吸収と引き続く骨形成を体表面から観察することができる。 本研究では、骨芽細胞と破骨細胞をそれぞれ別々の蛍光タンパク質でラベルできるように、レポーター遺伝子を組み込んだダブルトランスジェニックゼブラフィッシュTg (osterix: mCherry / TRAP: eGFP)を作製した。これにより蛍光顕微鏡下で体の表面から生きたまま破骨細胞と骨芽細胞の活動を体表面から観察できるようにした。そしてこの遺伝子改変ゼブラフィッシュのウロコに切り込みを入れて、その骨修復過程における細胞分化と骨吸収・骨形成活動を観察し、観察から骨吸収・骨形成の時期を確定した。 同定した骨吸収時期と骨形成時期のウロコ上の細胞をコラゲネース処理で集め、さらに蛍光セルソーターで破骨細胞と骨芽細胞を分けて集め、破骨細胞特異的に発現するカップリング因子候補と骨芽細胞発現因子とを次世代DNAシークエンサーによるトランスクリプトーム解析から探る。その後、分子生物学的な手法によりカップリング因子の同定とそれらの機能・メカニズムを含め明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書における2018年度予定は、「①組換えゼブラフィッシュを作製し、②組換え体ウロコで修復過程における細胞分化と破骨細胞と骨芽細胞の動きおよび骨吸収・骨形成活動を形態学的に解析し、正確に骨吸収期と骨形成期を同定する。」である。すでに昨年度中に、同一個体内で骨芽細胞マーカー遺伝子(osterix)プロモーターの下流に蛍光タンパク遺伝子mCherryと破骨細胞マーカー遺伝子TRAPプロモ ーターの下流に蛍光タンパク遺伝子eGFPを連結したダブルトランスジェニックTg (osterix: mCherry / TRAP: eGFP)を作製ずみである。また、遺伝子組換えゼブラフィッシュの切込みウロコの修復過程を蛍光および明視野顕微鏡で 経時的に観察し、骨吸収活動と骨形成活動時期の同定は完了した。現在は「③ フローサイトメトリー法によるセルソーティング」を実施するため、ウロコから骨芽細胞及び破骨細胞を傷つけずに集めるためのコラゲネース処理条件を検討中で、予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度に実施した切込みウロコの修復過程における細胞分化と細胞活動状況観察結果から、切り込み①直後、②12時間、③24時間、④72時間、⑤96時間後のウロコ上細胞をコラゲネース処理し、ウロコ上の細胞を剥離した後、蛍光利用のセルソーター (FACS)で単核破骨細胞、多核破骨細胞および骨芽細胞を別々に選択して集める。別々に単離した単核破骨細胞、多核破骨細胞および骨芽細胞の各時相で発現するmRNAを採取する。採取した発現 mRNAから逆転写によりcDNAを作製する。その後、次世代DNAシークエンサーによるトランスクリプトーム解析により目的とする時期に発現するmRNAを定量する。トランスクリプトーム解析により各修復時期で発現するmRNA定量結果を照合し、カップリング候補分子を選定する。さらに、カップリング候補分子の in situ hybridizationを実施し、破骨細胞の細胞質内での発現局在を確認する。2020年度は、破骨細胞の細胞質内での発現局在を確認できたカップリング候補遺伝子についてCRISPR-Cas9 システムによりノックアウトし機能阻害を実施し、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、研究分担者の古澤先生の分担業務が少なく、古澤先生の分担金が使われなかった。しかし、2019年度はウロコ上の細胞を剥離し、フローサイトメトリーで破骨細胞と骨芽細胞を分離する作業がある。また、単離した破骨細胞と骨芽細胞から発現するmRNAを別々に採取後逆転写によりcDNAを作製し、次世代DNAシークエンサーによるトランスクリプトーム解析を実施する。特に、cDNAを作製と次世代DNAシークエンサーによるトランスクリプトーム解析する際研究資金が多く必要のため未使用分も全て使用予定である。
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