研究課題
本研究は、恐怖を伴う情動における小脳神経回路の役割を明らかにすることを目的としている。ゼブラフィッシュをモデル動物として小脳神経回路の恐怖条件づけにおける役割の解明を試みた。小脳を含む神経回路の活性をモニターあるいは制御する遺伝子改変フィッシュ(Tg)を作製した。これまでに報告されている光遺伝学ツールに加えて、cAMP、カルシウムなどの細胞内二次メッセンジャーをニューロンに発現するTgを作製し、有用性を検討した。成魚を用いた能動的回避学習のシステムを構築するために、狭い通路を通じて往来できる2つのコンパートメントに分割された水槽に電極と緑色LEDを付けた装置を作製した。電気ショックとLED点灯を組み合わせたパラダイムで能動的回避学習を調べたところ、小脳顆粒細胞やプルキンエ細胞をボツリヌス毒素で機能阻害した成魚において学習個体の割合が低下していた。これらの魚では、運動機能に顕著な異常は見られなかった。以上のことから、恐怖に対する回避学習に小脳が重要な働きをしていることが明らかとなった(eNeuro in press)。さらに近年の研究で、小脳が自閉症の発症に関与していることが示唆されている。そこで、自閉症のモデルとしてゼブラフィッシュを用いた社会性行動の解析を行うシステムの構築を試みた。社会性行動として、魚が他の魚の行動を真似る同調行動を指標とした。二つの水槽に魚を入れ、互いに視認できるときの行動を解析することによって同調行動を解析した。小脳神経阻害魚において同調行動に異常が観察されたことから、社会性行動に小脳の関与が示唆された。以上のことから、小脳は運動学習のみならず恐怖応答や社会性行動にも関与していることが明らかとなった。
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eNeuro
巻: in press ページ: in press
生体の科学
巻: 72 ページ: 3-8
Development
巻: 147 ページ: dev.190603
10.1242/dev.190603
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/paper/2020-36/08.html