研究実績の概要 |
本研究は、以下の3つを主要な目的として行われてきた。1)SIK3がPER2を分解する機序を明らかにし、これまでの報告から示唆される、PER2の分解経路とは異なる新たな分解経路を明らかにする。2)概日リズム、睡眠、代謝をいずれも制御することが示唆されたSIK3について、それらの制御機構が独立した経路によるものか、あるいは、少なくとも一部が共通の分子またはシグナル伝達経路を介したものか、という疑問について、リン酸化酵素であるSIK3の直接、間接の標的分子の解析を通じて明らかにする。3)我々が明らかにしたSIK3による概日リズム制御が、睡眠や代謝の調節機構にも影響を及ぼしている可能性について,コンディショナルKOマウス等を用いて明らかにする。 以上の3つの研究目標について、これまでに示唆されたことは以下の通りである。1)SIK3 KO細胞、過剰発現細胞と正常細胞での発現比較解析の結果、SIK3のとオートファジーマーカーの発現には有意な相関が見られた。従って、SIK3の基質分解経路の一部にオートファジーが含まれることが示唆された。2)同定したSIK3の複数の基質候補群について、概日リズム、睡眠、代謝のいずれかの制御への関与について検討した。その結果、ケモカイン(受容体)が概日リズムの制御に関与している可能性が見出された。3)神経、グリア、またはその両細胞種特異的Sik3 KOマウスを作製し、同一個体で活動リズム測定と睡眠測定を実施した。その結果、神経またはグリア特異的なSik3 KOマウスで、活動リズムと睡眠の双方の異常が観察された。 以上から、新たにSIK3がオートファジーを介して基質を分解している可能性が浮上した。また、SIK3が脳の概日リズム制御では報告のなかったケモカイン(受容体)の量的制御を介して概日リズムを調節し、同時に睡眠の制御にも一部関与していることが示唆された。
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