研究実績の概要 |
本研究は、ペプチド作動性チャネルの構造機能相関を解明することを目指して継続している研究の一環であり、軟体動物のペプチド作動性チャネルであるFMRFamide作動性Na+チャネル(FaNaC)を用い、チャネルの細胞外ドメインに変異を導入したチャネルにおいて機能解析を行うことで、チャネルの活性化に関わる細胞外ドメイン構造を特定することを目的としている。 本年度は、FaNaCの細胞外ドメインに存在する7つのSS結合(SS1~SS7)によって維持される構造の機能的意味合いを探るために、SS結合を形成するシステインをアラニンに置き換えたSS結合除去変異体を作製し、FMRFamideによるチャネルの活性化を解析した。その結果、SS1, SS2, SS4, SS5, SS6変異体は野生型チャネルと同様な応答を示したが、SS2変異体はチャネル電流の発現が著しく抑えられていた。また、SS3, SS7変異体は高濃度のFMRFamideに対しても全く応答しなかった。SS3, SS7はthumbドメインとよばれる構造の維持に関わっているので、チャネルの活性化にはthumbドメインの構造維持が必要であることが示唆された。 次に、ホモロジーモデリングによりFaNaCの構造モデルを作製し、先行研究においてFMRFamide応答性に関与することが示唆された領域とその近傍を精査したところ、細胞外に露出すると思われる部位に、高度に保存されている芳香族アミノ酸が存在することがわかった。そこで、それら芳香族アミノ酸の点変異体チャネルを作製してFMRFamide応答性を検討した。その結果、170, 174, 176, 181位のフェニルアラニンをバリンに置換するとFMRFamide応答性が低下することがわかった。また、167位トリプトファンをバリンに置換するとFMRFamide応答性が消失した。
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