研究実績の概要 |
本研究は、ペプチド作動性チャネルの構造機能相関を解明することを目指して継続している研究の一環であり、軟体動物のペプチド作動性チャネルであるFMRFamide作動性Na+チャネル(FaNaC)を用い、チャネルの細胞外ドメインに変異を導入したチャネルにおいて機能解析を行うことで、チャネルの活性化に関わる細胞外ドメイン構造を特定することを目的としている。FaNaCの細胞外ドメインには、thumb, finger, palm, knuckle, β-ballと呼ばれるサブドメイン構造があり、本研究では、そのサブドメイン構造とチャネル機能の関係に着目している。 2018年度から2019年度にかけた研究により、thumbドメインの維持に関わることが想定されるSS結合を破壊すると、FaNaCのFMRFamide応答性が失われることが明らかにされた。さらに、thumbドメインの近傍に存在するfingerドメインに高度に保存される芳香族アミノ酸を同定し、点変異体のペプチド応答性解析、ドッキングシミュレーションによるin silicoでの結合予測実験から、157,167,170,174,176,181,188,189位の芳香族アミノ酸がFMRFamide応答性に関わることを明らかにした。ドッキングシミュレーションの結果から、188,189位の芳香族アミノ酸は、ペプチド結合反応ではなく、それに続くチャネルの活性化に関与している可能性が示唆された。 2020年度は、これまでに作製した変異体チャネルにおける生理実験とドッキングシミュレーションをさらに進めながら、これまでに得られた結果を論文にまとめた。残念ながら、投稿した論文はレフリーの評価が分かれた結果不採択となったが、レフリーに指摘された点を改良するために、作製した変異体チャネルを使った追加実験を計画して実行しているところである。
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