研究課題
本年度は、餌の匂いに対する行動の反応性と外部環境水について検討した。詳細に解析を行った結果、外部環境水の中野カルシウムイオンの濃度によって、餌の匂いに対する神経活動が変化することを見いだした。さらに、カルシウムイオンの濃度依存的に餌の匂いに対する神経活動を活性化させることで、摂食行動に影響していることを突き止めた。この結果から、餌の匂いと光刺激によって連合学習が成立する際には、外部環境が影響していること、また、この機構は、動物が環境に対して適応的な学習行動を変化させるための基盤となっていることが示唆された。この研究成果について、Zoological Letters誌に責任著者として発表した (Mori et al, Zool Lett, 2019)。次に、行動変化を引き起こす要因となる神経系ついて解析を進めた。プラナリアの摂食行動において、プラナリアは適切な餌に近づく(摂餌誘引行動)と、咽頭を口から体外に出して餌を探し、取り込むという特徴的な摂食運動を示す。解析の結果から、咽頭の摂餌誘引運動には、咽頭末梢神経のコリン作動性神経細胞およびオクトパミン作動性神経細胞が働くこと、また、咽頭の摂餌忌避運動には、ドパミン作動性神経細胞およびセロトニン作動性神経細胞が働くことがわかった。さらに、摂食行動におけるオクトパミン作動性神経細胞の役割を調べた結果、脳のオクトパミン作動性神経細胞は個体の摂餌誘引行動には必要ないこと、一方で、咽頭のオクトパミン作動性神経細胞は個体の摂餌誘引行動に必要であることがわかった。すなわち、摂食器官における末梢神経が、脳へ指令を送ることで個体の摂餌誘引行動などの行動制御をしていることが強く示唆された。この研究成果について、Science Advances誌に責任著者として発表した (Hattori, et al, Sci Adv, 2020)。
2: おおむね順調に進展している
これまで連合学習における行動変化は中枢神経系のみによって制御していると考えられてきたが、本研究によって、外部環境の因子および末梢神経も不可欠な役割をしていることが明らかとなった。また、これによって今後も計画通りに研究を進行できることが期待できる。
本年度は、おおむね順調に計画に沿って研究が進展したため、次年度以降も計画に沿って遂行していく予定である。
本年度は、計画通りに実験を行い、研究費も計画通りに使用した。最終年度は、一昨年度からの繰越金と合わせて、目的を達成できるように尽力したい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
Sci Adv
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