研究実績の概要 |
温度は生物の生存に必須の環境情報である。動物において温度情報は神経系や表皮など様々な細胞で受容されることが知られている。その中でも、感覚神経細胞における温度受容には、TRPチャネルが関わることが知られている一方で、TRPチャネル以外の温度受容体については未解明の点が多い。本研究者は、これまでに線虫C. elegansをもちいた低温耐性の解析から、個体の低温耐性が、頭部の温度受容ニューロンで受容された温度情報によって制御されることが見つかってきた(Ohta et al., Nature commun, 2014)。この温度受容ニューロンにおいて、温度情報は視覚や嗅覚などと同様に三量体Gタンパク質(Gα)で伝達されることが見つかってきている(Ohta et al., Nature commun, 2014; Ujisawa et al., PLOS ONE, 2016)。本研究では、低温耐性における温度受容ニューロンに着目し、未知の温度情報伝達に関わる分子の同定を目指し解析を進めている。具体的には、Gαの上流の分子や、TRPやGαに依存しない温度情報伝達分子に着目し、未同定の新規の温度受容体の単離を目指し逆遺伝学的スクリーニングと順遺伝学的スクリーニングを行った。温度受容体候補遺伝子のノックアウト変異体を単離し、その変異体の低温耐性異常と温度受容ニューロンにおける温度応答性の低下が見つかった。また、新規の低温耐性変異体endu-2とkqt-2の解析から、低温耐性に関わる新規の温度受容ニューロンとして、従来は化学受容ニューロンとして知られていたADL感覚ニューロンが温度に応答することをカルシウムイメージングにより明らかにした。
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