研究課題/領域番号 |
18K06345
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
藍 浩之 福岡大学, 理学部, 准教授 (20330897)
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研究分担者 |
岡田 龍一 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (20423006)
佐倉 緑 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (60421989)
池野 英利 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80176114)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 行動学 / 神経科学 / 昆虫 / 生理学 |
研究実績の概要 |
本申請研究は、ミツバチの尻振りダンスで符号化された蜜源の方向情報を、情報受信者である追従蜂がどのように検出し、その情報を脳内でどのように解読するのかを調べるものである。今年度は、片側触角を局所被覆することで、尻振りダンスに対する追従行動にどのような影響があるかを調べることにより、追従行動の開始と持続に触角のどこからの入力が必要であるのかを評価した。具体的には、成虫羽化後のセイヨウミツバチの片側触角の鞭節先端、鞭節中央、梗節を局所被覆した個体群に加え、触角被覆なし群を用い、尻振りダンスへの追従数、連続追従数、出巣数を解析した。その結果、以下の事が分かった。 ①被覆なし群では、16~20日齢で最も尻振りダンスへの追従数、および出巣数が増加する。また、尻振りダンスへの連続追従数は、1回で終了する追従から5回以上持続する追従まで見られた。②鞭節先端被覆群は、被覆なし群に比べて追従数、および出巣数のピークが遅れた。連続追従数は、1回で終了する追従から5回以上持続する追従まで見られた。③鞭節中央被覆群は、被覆なし群に比べて追従数が減少し、 出巣数のピークが遅れた。連続追従数は、1回で終了する追従から5回以上持続する追従まで見られた。④梗節被覆群は、被覆なし群に比べて追従数、出巣数ともに低く、特に被覆なし群で最も追従数・出巣数の多かった16~20日齢で、追従、および出巣はほとんど見られなかった。連続追従数は、1回のみしか起こらず、連続追従を行わないことが分かった。これらのことから、追従開始や追従持続、さらに出巣を引き起こすための重要な入力が触角両側の梗節を通して行われている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、ミツバチの触角を被覆することで、追従蜂の追従様式の詳細な解析を行い、両側触角梗節からの入力がダンス追従の開始と持続に重要であることを発見した。触角梗節には振動受容器官であるジョンストン器官が存在することから、追従バチはダンサーの尻振りダンスの際に生じる特徴的な羽ばたき振動を両側触角のジョンストン器官で受容することで、ダンサーの位置を検出していると考えられる(両側梗節入力仮説)。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、両側ジョンストン器官への振動入力がどのようにダンサーに知覚されているのかを電気生理学的に調べる必要がある。脳内で両側梗節振動入力を処理する候補介在ニューロンはすでに同定しているので、今後はそれらニューロンの振動統合機構に焦点を当てて電気生理学的な解析を進める。また、福岡大学で設置を予定していた偏光刺激に対するミツバチの定位行動の実験装置の作成は、新型コロナ感染予防のため停止している。緊急事態宣言が終了し、神戸大学の佐倉氏、岡田氏を福岡大学に招聘し、早急に構築を進める。この装置を利用することで、両側梗節からの入力がダンスに符号化されたベクトル方向の検出にも役立っているかを行動学的に調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染予防のため、神戸大学の佐倉氏、岡田氏を招へいできず、当該予算を執行しなかった。次年度は、今年度まだ終了していない、定位行動の実験装置の作成を含む消耗品とこの招聘費用で、今年度予算と合わせ執行する予定である。
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