研究課題/領域番号 |
18K06348
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 卓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80744870)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスポゾン / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
トランスポゾン(TE)はゲノム中に散在する転移性因子で、ゲノム進化に寄与してきた一方、遺伝子破壊などの潜在的な危険性を持つ。植物ではその多くがエピジェネティックに不活性化されているが、いくつかのTEは転移活性を維持していることが知られる。転移能を持つシロイヌナズナのDNA型TE、VANDAL21は、転移酵素に加えて脱抑制因子VANC21をコードする。VANC21による脱抑制は配列特異的であり、VANDAL21ファミリーのTEのみが脱メチル化される。この、VANC21が持つ配列特異的な脱抑制機構を解明するために、順遺伝学的スクリーニングを行なった。 前年度までに、脱抑制因子であるVANC21を発現させた系統をEMS処理により変異誘導し、脱抑制が見られなくなる変異体を選抜した。本年度はこれらの候補について、自殖したM3世代での再現性を調べたところ、多くの候補では脱抑制は正常に起きており、偽陽性であったことがわかった。そこで、これまでのDNAメチル化によるスクリーニングは、実験的な手間も多く、偽陽性も多いことから、より簡便なスクリーニング系の構築を試みた。 表現型によるスクリーニングを実現させるため、脱抑制能を持たない変異型VANC21を持ち、内部にカナマイシン耐性遺伝子を導入した配列をレポーターとし、カナマイシンを含む培地上での根の伸長を調べた。このレポーター遺伝子はDNAメチル化を受け、カナマイシンを含む培地上では根の身長が阻害されるが、この系統に機能的なVANC21を導入するとレポーター遺伝子のDNAメチル化が低下し、カナマイシンに対する耐性も見られるようになった。今後はこの系を用いてスクリーニングを進め、VANC21による脱抑制機構の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していたDNAメチル化によるスクリーニングでは、実験の手間がかかり、偽陽性も多く見られることがわかり、当初の予定より進捗がやや遅れている。この点を解決するため、より簡便なスクリーニング系の構築を試みた。VANDAL21内部にカナマイシン耐性遺伝子を導入したレポーターを用い、カナマイシンを含む培地での根の伸長を指標とした新たなスクリーニングの系を構築した。このレポーター遺伝子を持つ系統では、野生型に比べるとカナマイシンに対して耐性を持つものの、機能的なVANC21がない状態ではカナマイシンを含む培地上で根の伸長が阻害された。また、レポーター遺伝子もDNAメチル化を受けていた。この系統に機能的なVANC21を導入したところ、レポーターのDNAメチル化が低下し、根の伸長も促進された。また、これまでに、カナマイシン濃度などスクリーニングのための条件を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新たに構築したカナマイシン耐性遺伝子を組込んだレポーター系を用いて、カナマイシンを含む培地での根の伸長を指標としたスクリーニングを行う。脱抑制機構とは独立な、根の発達に関わる変異体が得られる可能性もあるため、得られた候補については内生のVANDAL21の転移およびDNAメチル化レベルを調べ、脱抑制機能が阻害されているものを選んで、原因遺伝子の同定をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初のスクリーニング系では偽陽性が多かったため、本年度は新たなスクリーニング系の構築を行った。そのため、スクリーニングにかかる費用が減少し、当初の予定と差額が生じた。今年度以降、新たな系でのスクリーニングとマッピングを行う予定であり、原因遺伝子同定に用いる次世代シークエンス解析の費用に充てる予定である。
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