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2020 年度 実施状況報告書

オルガネラ翻訳系の品質管理

研究課題

研究課題/領域番号 18K06350
研究機関岡山大学

研究代表者

阿保 達彦  岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90303601)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードリボソームレスキュー / 翻訳 / 葉緑体
研究実績の概要

クラス1翻訳終結因子(バクテリアではRF1・RF2)は終止コドンを認識し,翻訳を終結させる。終止コドンを持たないmRNA(non-stop mRNA)を翻訳するリボソームは翻訳を正常に終結することができず,non-stop mRNAの3'末端で立ち往生し,不活性な複合体,non-stop translation complex(NTC)を形成する。NTCの蓄積は翻訳活性の低下を招き,生命活動にとって有害となる。
生物は立ち往生したリボソームを積極的にレスキューしNTCを解消する機構を備える。本研究は葉緑体におけるリボソームレスキュー機構を明らかにし,リボソームレスキュー機構の普遍性を示すことを目的とした。
大腸菌リボソームレスキュー因子の一つArfBはクラス1翻訳終結因子のホモログであり,終止コドン非依存的翻訳終結因子として機能する。ArfBのホモログをコードする遺伝子をシロイヌナズナ,ゼニゴケ,クラミドモナスの各ゲノムに見出した。いずれも葉緑体移行シグナルを有することから葉緑体で機能することが示唆され,実際にシロイヌナズナのArfBホモログ(AtArfB)は葉緑体に局在した。ゼニゴケのArfBホモログ(MpARFB)についても葉緑体局在を強く示唆する結果を得た。AtArfB,MpARFB,さらにクラミドモナスのArfBホモログ(CrArfB)はいずれも大腸菌のアッセイ系でリボソームレスキュー活性を示した。これらのうちAtArfBに関してその活性,葉緑体局在,欠損株の表現型解析を行った結果はGenes & Genetic Systems誌で発表した。現在はMpARFBを欠損するゼニゴケの表現型を探索するとともに,MpARFBの葉緑体局在の確認,CrArfBを欠損するクラミドモナスの表現型の探索を行なっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シロイヌナズナのArfBホモログ(AtArfB)の解析:AtArfBがArfB同様に原核生物型翻訳系でリボソームレスキュー活性を示すこと,葉緑体に局在することを示した。これはAtArfBは葉緑体翻訳系で機能するリボソームレスキュー因子であることを強く示唆し,AtArfBの欠損は健全な葉緑体の維持に必須であると予想されたが,AtArfB欠損植物体は生育に一定程度の遅延は見られたものの,致死や白化など極端な表現型は見られなかった。以上の成果はNagao et al., Genes Genet. Syst. 95: 119-131 (2020)として公表した。現在シロイヌナズナ葉緑体にはAtArfB以外にもリボソームレスキュー因子が存在する可能性を追求している。
ゼニゴケのArfBホモログ(MpARFB)の解析:MpARFBが原核生物型翻訳系でリボソームレスキュー活性を示すことを示した。また,葉緑体に局在することを示唆する結果を得,現在確認作業中である。さらに,CRISPR/Cas9システムを利用したMpARFBのノックアウト株の作出を試みた。
クラミドモナスのArfBホモログ(CrArfB)の解析:CrArfBが原核生物型翻訳系でリボソームレスキュー活性を示すことを示した。現在CrArfB欠損株の表現型を探索中である。

今後の研究の推進方策

令和2年度(2020年度)は新型コロナウィルス感染症流行により,研究環境が極めて悪化し,計画通りに研究を遂行することができなかった。しかし,研究期間の延長が認められたため,当初計画のうち,未だ実行できていない解析を行う。
シロイヌナズナゲノムには複数のRFホモログ遺伝子が存在する。それらとAtArfBとの二重変異を作成し,その表現型を解析する。また,AtArfB欠損植物体を様々なストレス条件下に置いてその表現型を詳しく調べる。
MpARFB欠損株の表現型の探索を行う。様々なストレスを与えた場合の生育を詳しく観察し,MpARFBが必要とされる環境を見出す。予備的な解析では,ストレスに対する応答に影響が観察された。さらに,MpARFBの葉緑体局在の確認を行い,ゼニゴケ葉緑体におけるリボソームレスキューの生理学的意義の解明に迫る。
CrArfB欠損株の表現型を探索する。葉緑体で翻訳される遺伝子をnon-stopになるように改変するなど,健全な翻訳型の維持にとってストレスとなるような条件でCrArfBを欠損させた際の表現型を調べる。
以上の解析を通して,本研究計画の目的である葉緑体におけるリボソームレスキューの全体像の理解を目指す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症流行により,研究環境が極めて悪化し,計画通りに研究を遂行することができなかったため,研究期間の延長を申請し,受理された。令和3年度には,令和2年度に計画していたものの遂行できなかったAtArfB,MpARFB,CrArfBそれぞれの欠損株の表現型の探索を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Ribosome rescue activity of an <i>Arabidopsis thaliana</i> ArfB homolog2020

    • 著者名/発表者名
      Nagao Michiaki、Tsuchiya Fumina、Motohashi Reiko、Abo Tatsuhiko
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 95 ページ: 119~131

    • DOI

      10.1266/ggs.20-00007

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular determinants of release factor 2 for ArfA-mediated ribosome rescue2020

    • 著者名/発表者名
      Kurita Daisuke、Abo Tatsuhiko、Himeno Hyouta
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 295 ページ: 13326~13337

    • DOI

      10.1074/jbc.RA120.014664

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 大腸菌ArfAの機能発現に必須なアミノ酸残基の探索2020

    • 著者名/発表者名
      徳下貴一,中尾日向子,橋本亜由己,阿保達彦
    • 学会等名
      日本遺伝学会第92会大会(熊本市・熊本大学)(冊子体のみでの実施)

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公開日: 2021-12-27  

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