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2021 年度 実施状況報告書

オルガネラ翻訳系の品質管理

研究課題

研究課題/領域番号 18K06350
研究機関岡山大学

研究代表者

阿保 達彦  岡山大学, 自然科学学域, 教授 (90303601)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードリボソームレスキュー / 翻訳 / 葉緑体
研究実績の概要

翻訳はクラス1翻訳終結因子がリボソームAサイトに位置する終止コドンを認識し,ペプチジルtRNAを加水分解することにより終結する。ペプチジルtRNAの加水分解後,リボソームはmRNAから解離して新たな翻訳を行う。mRNA上に終止コドンが存在しないと終結因子が機能することができず,リボソームはmRNAの3'末端に,ペプチジルtRNAがPサイトに存在する状況で立ち往生する。立ち往生したリボソームが蓄積すると,細胞内におけるリボソームの有効濃度が低下し,生命活動の維持に必要な翻訳活性を維持できず,細胞は死に至る。これに対し,細胞はリボソームの立ち往生を解消する機構,すなわちリボソームレスキュー機構を備える。
大腸菌リボソームレスキュー因子の一つArfBはクラス1翻訳終結因子のホモログであり,終止コドン非依存的翻訳終結因子として機能する。これまでにシロイヌナズナ,ゼニゴケ,クラミドモナスの各ゲノムにArfBのホモログをコードする遺伝子を見出した。いずれも葉緑体移行シグナルを有することから葉緑体で機能することが示唆され,実際にシロイヌナズナのArfBホモログ(AtArfB)は葉緑体に局在することをすでに示している。令和3年度には,主にゼニゴケのArfBホモログ(MpARFB)に関して解析を行った。MpARFBを蛍光タンパク質標識して解析したところ,葉緑体に局在することを強く示唆する結果を得た。現在は葉緑体移行シグナルと思われる配列を除去した際の挙動を調べることで,葉緑体局在を確認している。さらに,MpARFBを欠損するゼニゴケが生殖器形成不全の表現型を示す予備的結果を得た。現在,相補実験などによる確認作業を行なっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

一昨年以来の新型コロナ感染症対策による活動制限の影響で,研究活動に一部支障をきたしたため,研究の進捗に遅れがある。
ゼニゴケのArfBホモログであるMpARFBをクローン化し,大腸菌細胞内でIPTG誘導型プロモーターから発現させる系を構築した。大腸菌の主要なリボソームレスキュー因子であるssrAとそのバックアップ因子であるarfAを破壊した大腸菌は生育できないが,活性のあるリボソームレスキュー因子が発現すると生育可能となる。これを利用して,リボソームレスキュー活性を評価することができる。この系を利用し,MpARFBが翻訳系でリボソームレスキュー活性を示すことを示した。
クラス1翻訳終結因子の翻訳終結機能にはGGQモチーフと呼ばれるモチーフが必須であり,そのホモログである大腸菌ArfBのリボソームレスキュー活性にもGGQモチーフが必須である。MpARFBのGGQモチーフを破壊するとリボソームレスキュー活性が失われることから,MpARFBが実際に大腸菌ArfBと同様の機構によってリボソームをレスキューすることが示された。
また,MpARFBを蛍光タンパク質標識して解析したところ,葉緑体に局在することを強く示唆する結果を得た。
さらに,MpARFBを欠損するゼニゴケが生殖器形成不全の表現型を示す予備的結果を得た。

今後の研究の推進方策

令和3年度(2021年度)は新型コロナウィルス感染症流行により,研究環境が悪化した状況が継続し,計画通りに研究を遂行することができなかった。しかし,研究期間の延長が認められたため,当初計画のうち,未だ実行できていない解析を行う。
MpARFBを欠損するゼニゴケが示す生殖器形成不全の表現型が,野生型MpARFBを発現させることで相補されること,機能欠損型MpARFBを発現させても相補されないことを示し,葉緑体におけるリボソームレスキュー機能の欠損によることを確認する。
また,蛍光タンパク質で標識したMpARFBの細胞内局在を,葉緑体移行シグナルの有無など様々な条件で解析し,葉緑体に局在することを明確に示す。
本研究ではシロイヌナズナ葉緑体やクラミドモナス葉緑体のリボソームレスキュー因子についての解析も計画している。シロイヌナズナゲノムには複数のRFホモログ遺伝子が存在する。それらとシロイヌナズナArfB(AtArfB)との二重変異を作成し,その表現型を解析する。また,AtArfB欠損植物体を様々なストレス条件下に置いてその表現型を詳しく調べる。さらに,クラミドモナスArfB(CrArfB)を欠損する変異クラミドモナス株の表現型を探索する。葉緑体で翻訳される遺伝子をnon-stopになるように改変するなど,健全な翻訳型の維持にとってストレスとなるような条件でCrArfBを欠損させた際の表現型を調べる。
以上の解析を通して,本研究計画の目的である葉緑体におけるリボソームレスキューの全体像の理解を目指す。

次年度使用額が生じた理由

令和3年度(2021年度)は令和2年度(2020年度)に引き続き新型コロナウィルス感染症流行により,研究環境が悪化した状況が継続し,計画通りに研究を遂行することができなかった。研究期間の延長により,当初計画のうち,未だ実行できていない解析を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ゼニゴケのリボソームレスキュー因子2021

    • 著者名/発表者名
      牧野愛子、小山巧、本瀬宏康、阿保達彦
    • 学会等名
      日本遺伝学会第93会大会(東京)

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公開日: 2022-12-28  

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