研究課題/領域番号 |
18K06351
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中越 英樹 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50314662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 妊性 / 精液 / 栄養シグナル / ステロイドホルモン |
研究実績の概要 |
キイロショウジョウバエのオス生殖器官 (附属腺) で合成される附属腺タンパク質 (Accessory gland proteins; Acps) は精液中に分泌され,交尾・射精によってメス子宮内に移行して,メスにさまざまな交尾後応答 (産卵,交尾拒否など) を引き起こす.附属腺は二種類の細胞 (~1,000 個の主細胞,~60個の第二細胞) から構成されており,交尾後応答の主要な作用を担うAcp70A (別名 sex peptide; SP) は主細胞で合成される.附属腺における dve 遺伝子の発現は蛹期から開始するが,成虫期には第二細胞のみで発現が維持され,主細胞での発現は蛹期後期から抑制される.成虫期主細胞においては,Dve タンパク質が恒常的に分解されており,小胞体ストレスや過剰栄養を感知することで分解阻害 (脱抑制) が生じ,安定化した Dve がSP 発現を低下させることで妊性低下を誘導する.インスリン受容体活性化型 InR[act] による過剰栄養シグナルは小胞体ストレスを介して Dve 脱抑制と附属腺の萎縮を招くが,PI3K 活性化型 PI3K[act] による栄養シグナル亢進は Dve 脱抑制を誘導せず,附属腺が肥大した.ここで,InR[act] と PI3K[act] の共発現を行うと,Dve 脱抑制は起きるが附属腺の萎縮は解消され,正常よりも大きな附属腺となった.つまり,過剰栄養ストレスによって誘導される Dve 脱抑制は PI3K あるいはその上流因子に対してネガティブ・フィードバックをかけることで,附属腺の成長阻害と妊性低下を引き起こしていることが明らかになった.また,栄養シグナル依存的な Dve 発現量に応じて第二細胞数および妊性が規定されることも明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過剰栄養シグナルによって主細胞に Dve 脱抑制が誘導され,妊性低下を招く経路を概ね明らかにすることができた.マイクロアレイ解析によって Dve 標的遺伝子候補も同定された.
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今後の研究の推進方策 |
ストレス応答に伴う主細胞 Dve 脱抑制時の標的遺伝子候補について,詳細な解析を進める.
第二細胞については,栄養非依存的に誘導された Dve 発現が栄養非依存的に維持される機構について,クロマチン構造との関係性を含めて詳細な解析行い,論文として発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初計画より少ない物品費で実施できたため,222,388円の未使用額が生じた. (使用計画)物品費として使用予定.
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