研究実績の概要 |
Mycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH) のニッチ適応に寄与するアレルまたは遺伝子座が組換えによって集団内を移動しているかどうかを浴室分離株の新規ゲノム解読と生物情報学的解析によって検証することを目指している。そのために、まずデータベースに登録済みのMAH世界分離株125株分の染色体配列データを対象として遺伝的集団構造解析や連鎖検出解析などを行い、組換えを頻繁に行う系統と組換えをあまり行わない系統の2系統が同じ地域に生息し、それらが“交配”していることをゲノム情報学的に明らかにした。さらに組換えのコールドスポットに注目することで、環境分離株の迅速な系統予測に利用可能なマーカー遺伝子を発見した(Yano et al., BMC Genomics 2019)。MAH臨床群と浴室群のゲノム比較を行う準備のために、これまでに得られていた臨床群5株分のロングリードアセンブリー配列に対しショートリードを用いた配列補正を行った。関連して、MAH HP17株、S2株、P7株、CAM57、OCU464株のゲノムのGenbank ファイルの内容をアップデートして公開した。さらにMAH非臨床株の40株分の完全ゲノム解読を目指してロングリード解析用のDNA調製を行い、それらをシーケンシング担当機関に提出した。利用可能なベクターがほとんどないMAHなどの菌種の研究を推進するため、プラスミドDNAを基本骨格とするベクター作成方法に関するアイデアを記載した総説を発表した(Yano et al., CSBJ 2019)。分子遺伝学実験に適した遺伝子導入効率が高いモデル細菌株を探すために、東アジア系統に属することがすでに判明している45株のM. avium浴室分離株を対象にTM4ファージの感染実験を行なったが、高効率でプラークを形成する株を見つけることはできなかった。
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