研究課題
二酸化炭素濃度の乏しい水圏に生息する藻類は独自の無機炭素濃縮機構をもち、その中心にはルビスコタンパク質が高密度に集積したピレノイドが存在する。しかし、そのピレノイドを形成するメカニズムは明らかにされていない。本研究では、真核藻類のもつピレノイドの構築メカニズムとその進化を明らかにすることを目的に、海産の単細胞藻類であるクロララクニオン藻(Amorphochlora amoebiformis)を用いて、ピレノイドに含まれる新規タンパク質の探索を行っている。平成30年度は、新規の遺伝子導入系を用いたピレノイドのGFP蛍光標識とパーコール遠心法によるピレノイド単離法の確立に成功した。平成31年度は、この技術を用いてクロララクニオン藻の細胞から純度の高いピレノイドの大量精製を行った。この精製ピレノイドよりた全タンパク質を抽出し、nano LC-MS/MSによりプロテオーム解析を行った。三回の独立した解析により、約150種のピレノイド含有タンパク質の同定に成功した。既に報告されている緑藻Chlamydomonasのピレノイド含有タンパク質と比較したところ、構成が大きく異なることが明らかとなった。プロテオーム解析の結果を踏まえ、一部のタンパク質において、GFP融合タンパク質を用いた細胞内局在を行い、ピレノイドに局在することを確認した。加えて、2つのタンパク質において、ポリクローナル抗体を作成して、蛍光抗体法による局在解析を行った。その内一つは、ピレノイドを覆うように局在する機能未知のタンパク質であった。これらの研究成果の一部は、国内学会で発表を行い、投稿論文として報告した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成30年度に本研究計画の重要な基盤であり難題であった「ピレノイド単離法の確立」を行うことで、平成31年度はスムーズに研究を進展させることができた。予定していたプロテオーム解析を3回行うことができ、再現性のある堅実なデータが取得できた。この結果を踏まえ、GFP融合タンパク質を用いた局在解析も予定通り行うことができた。さらに、次年度に予定していたピレノイド局在タンパク質に対するポリクローナル抗体の作成も一部進めることができた。
令和元年に同定したピレノイド含有タンパク質の中から複数のタンパク質を選抜して、抗体作成を行う。その際、クロララクニオン藻の複数種のトランスクリプトームデータを基に、本藻群の中で保存されている機能未知のタンパク質を優先的に取り扱う。作成するポリクローナル抗体を用いて、蛍光抗体法や免疫電顕法を用いて詳細なタンパク質局在を解析する。また、免疫沈降法を用いて、ルビスコタンパク質と親和性のあるタンパク質の同定を試みる。これらの実験を介して、ピレノイド形成に関与するタンパク質の特定に結び付けたい。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Pathogens
巻: 9 ページ: 257
https://doi.org/10.3390/pathogens9040257
Algal Research
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1016/j.algal.2020.101903
Nature Methods
https://doi.org/10.1038/s41592-020-0796-x
Biomolecules
巻: 9 ページ: 140
10.3390/biom9040140
Parasitology International
巻: 69 ページ: 13~16
https://doi.org/10.1016/j.parint.2018.10.011
Perspectives in Phycology
10.1127/pip/2019/0088
https://yhirakawa.weebly.com/