研究課題/領域番号 |
18K06359
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
新村 芳人 宮崎大学, 農学部, 教授 (90396979)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 嗅覚受容体 / 遺伝子ファミリー / 哺乳類 / フェロモン / ゲノム進化 |
研究実績の概要 |
2022年度は、以下の研究実績を得た。 霊長類は優れた視覚をもつが、嗅覚は他の哺乳類に比べて退化している。また、イルカは聴覚(反響定位)をもちいて獲物を探すことができるが、味覚・嗅覚などの化学感覚は退化している。このように、進化の過程で異なる感覚間でトレード・オフが起きることが知られている。では、嗅覚・味覚・フェロモンという化学感覚同士では、このようなトレード・オフは起きるのだろうか?このことを調べるため、齧歯類のヤマアラシ亜目を用いて解析を行った。マアラシ亜目は生態的・形態的に多様であることに加え、嗅覚・味覚・フェロモンの受容体遺伝子数が多く、本解析に最適である。全ゲノム配列が利用可能な17種のヤマアラシ亜目に対し、嗅覚・味覚・フェロモンの受容体であるOR, T2R, V1Rの同定を行った。そして、17種間でオーソログ遺伝子群を同定し、ヤマアラシ亜目の進化過程における遺伝子の増減数を推定した。その結果、嗅覚・味覚・フェロモン三者の受容体遺伝子は、増減が同調していることが明らかになった。すなわち、化学感覚間においては、感覚のトレード・オフが起きるのではなく、同調して進化している。また、遺伝子の増減の速度は、V1R遺伝子が最も速く、次いでOR遺伝子、最も遅いのがT2R遺伝子であった。この結果は、種特異的なフェロモン、生育環境に依存する匂い物質、そして生物間で共通した毒物(苦味物質)という三者のリガンドの違いを反映していると考えられる。以上の結果を論文にまとめ、国際誌に投稿した。現在リバイズ中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記解析の結果はすでに論文としてまとめ、国際誌に投稿した。現在リバイズを行っている。したがって、「オーソログ遺伝子群を用いた嗅覚受容体遺伝子のゲノム進化解析と環境要因との相関」という課題の仕上げに向けて、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であるので、上記論文のリバイズを完了させ、公表する。また、昨年度までに行ったヒトOR多型データの解析結果も論文にまとめ、国際誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度はすでに研究室にある解析用サーバを使って解析を行ったため未使用額が生じたが、かなり古いマシンでありスペックも不足しているため、2023年度に新規サーバを購入した。また、2022年度は新型コロナウイルス感染症のため対面での学会や研究打ち合わせが中止となったが、2023年度には積極的に国内・国際 学会に参加し、発表を行う予定である。
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