研究課題/領域番号 |
18K06362
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 洋一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70165835)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 爬虫類 / 性染色体 / 遺伝連鎖群 / DNAマーカー / ゲノム配列解析 / 性決定遺伝子 / 生殖腺 / 遺伝子導入 |
研究実績の概要 |
ソメワケササクレヤモリ(Paroedura picta)は、同属の他種と同様に雌優性型(ZW型)の遺伝的性決定機構をもつと考えられている。しかし、ギムザ染色による核型解析では雌雄間で染色体の形態に違いが見られないため、性染色体はまだ同定されていない。そこで、雌雄の成体の臓器から線維芽細胞の培養を行なって染色体標本を作製し、C-分染法(構成的へテロクロマチンの染色)とCGH(Comparative Genomic Hybridization)法を用いて、性染色体の同定を試みた。その結果、C-分染法では、性特異的なヘテロクロマチン領域をもつ染色体は検出できなかった。次に、雌雄ゲノムを異なる蛍光色素で標識し雌雄の染色体にハイブリダイゼーションを行なった結果、性特異的な蛍光シグナルは検出されなかった。また、多くの種で性染色体に存在することが知られているリボソームRNA遺伝子のFISH解析を行なったところ、雌雄ともにマイクロ染色体1対に存在し、それらのコピー数には雌雄差は見られなかった。さらに、性染色体特異的にテロメア配列が増幅した染色体も観察されなかった。以上の結果から、ソメワケササクレヤモリでは性染色体の構造的な変化はほとんど起こっていないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ソメワケヤモリの臓器組織を用いた細胞培養は順調に進み、プライマリー培養した線維芽細胞から細胞株を確立することができた。性染色体の内、性特異的に分化した性染色体(YもしくはW染色体)に特異的に見られる、C-ヘテロクロマチン、マイクロサテライトDNA配列、ならびにテロメア配列の増幅は観察できなかった。また、CGH法を用いても性染色体は同定できなかった。したがって、染色体の形態学的解析によってソメワケササクレヤモリの性染色体を同定することは困難であると考えられる。そのため、性特異的なゲノム領域を特定する研究にはまだ進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
染色体解析については、ヘビ・トカゲ亜目の種において性特異的な染色体(W染色体またはY染色体)で増幅が確認されている3-6 bpのマイクロサテライトリピートを用いたFISH解析を行い、性染色体の同定を試みる。また、代表者の過去の研究で、同じヤモリ科に属するミナミヤモリ(Gekko hokouensis)から単離した大量のcDNAクローンを、FISH法を用いてソメワケササクレヤモリの染色体にマッピングし、性染色体の候補となる染色体の遺伝連鎖群を同定する。そして、相同なニワトリ染色体に存在する遺伝子のソメワケササクレヤモリホモログcDNAをクローニングして性染色体にマッピングし、性特異的に生じた構造変化によって組換えが抑制されている領域の検出を試みる。 性染色体が特定できた場合、性染色体に連鎖するgametologous遺伝子などの性特異的なDNAマーカーを用いて性判別した雌雄の胚各3つずつについて、NGSを用いてシーケンス解析を行う。そしてSNP情報をもとに性特異的なゲノム領域の検出を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に細胞遺伝学的手法を用いてソメワケササクレヤモリの性染色体の同定を試みたが、ZW染色体間に形態学的な違いを検出することができなかった。そこで、ソメワケササクレヤモリの雌雄で全ゲノム配列の解析を行い、雌雄間でゲノム構造が異なる領域の検出を試みる。さらに、既に代表者らの先行研究においてZW型性染色体とその構造の違いを検出しているミナミヤモリについても同様に雌雄の全ゲノム配列を決定し、その結果とも比較し、ソメワケササクレヤモリの性特異的なゲノム領域の同定を試みる。そのため、2019年度の配分額と前年度の繰越額を合わせた予算で、これらのゲノム配列解析を実施する。
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